The 125th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

Presentation information

ランチョンセミナー

[LS1-00_01] 日本畜産学会若手企画委員会主催・ランチョンセミナー「次世代シーケンシング技術(NGS)の最新動向」

Thu. Mar 28, 2019 11:45 AM - 12:45 PM 第I会場 (8号館8301講義室)

(公社)日本畜産学会 若手企画委員会 主催
シンポジウム・ランチョンセミナー
(一般財団法人旗影会協賛)
「次世代シーケンシング技術(NGS)の最新動向」

NGSやバイオインフォマティクスといった技術革新により,ゲノム解読やトランスクリプトーム解析は家畜においても可能になっています.本シンポジウムでは,バイオインフォマティシャンとして活躍されている重信秀治 博士を招き,講演の前半ではNGSの最新動向についてレビューして戴きます.後半には,NGSで得られた情報を駆使して明らかになってきた生物発光と共生の遺伝子・ゲノムレベルでの進化について,それぞれホタルとアブラムシを例に紹介して戴きます.今後NGSの利用を検討されている,すでに利用されている研究者に必聴の講演です.

日  時:2019年3月28日(木) 11:45~12:45
場  所:第I会場 8号館3階8301講義室
講  演:LS1-01 「NGSが切り拓く昆虫研究のフロンティア」
重信秀治 (基礎生物学研究所 生物機能情報分析室・准教授)
参 加 費:無料(申込先着100名まで弁当付き)
世 話 人:水島秀成(北海道大),中村隼明(広島大)
申込方法:事前予約制です.若手企画HPに掲載されている専用のWeb申込フォームから申し込みください(学会メールマガジンでも通知致します).
若手企画HP:http://www.jsas-org.jp/wakate/

連 絡 先:世話人代表 水島秀成(北海道大)
〒060-0810 北海道札幌市北区機北10条8丁目
北海道大学 大学院理学研究院生物科学部門 生殖発生生物学分野助教
TEL: 011-706-3522 E-mail: smizus@sci.hokudai.ac.jp
※お問い合わせの際は,件名を「問合せ:若手企画ランチョンセミナー」としてください.

11:45 AM - 12:15 PM

[LS1-01] NGSが切り拓く昆虫研究のフロンティア

重信 秀治 (自然科学研究機構 基礎生物学研究所)

次世代シーケンシング技術 (Next-generation sequencing; NGS) やバイオインフォマティクスなど近年の技術革新のおかげで,ゲノム解読やトランスクリプトーム解析は,モデル生物・非モデル生物を問わず,容易になってきた.NGSは基礎的な生物学から,応用的な医学・農学分野まで広く浸透してきている.本講演の前半では,NGSの最新動向を簡単にレビューする.例えば,PacBioやナノポアに代表されるロングリードシーケンサー,Chromiumによる擬似的ロングリード,HiCによるスーパースキャッフォルディングなどのゲノム解読のための新技術,そして,シングルセルRNAseqなどの遺伝子発現解析のための新技術などを取り上げる.
 地球上で最も多様性に富む生物群とも言われる昆虫の研究分野もこれら技術革新の恩恵を大いに享受し,新しい昆虫科学が始まりつつある.NGSで得られた情報をもとにそれぞれの昆虫特有の興味深い形態や生理などの進化を遺伝子・ゲノムレベルで明らかにする研究は,多くの昆虫種でますます盛り上がりを見せている.私は基礎生物学研究所の共同利用研究を通して,多様な昆虫のゲノムプロジェクトを展開してきた.その中から,本講演の後半では,ホタルとアブラムシを取り上げる.われわれは生物発光の進化を明らかにするため,ヘイケボタル Aquatica lateralis のゲノムを解読した.ホタルの発光については,ルシフェラーゼ酵素がルシフェリンを基質として,酸素とATPを使って光を発生することがすでに明らかにされているが,ゲノム解析により,ルシフェラーゼ遺伝子の起源は,光らない生物でも普遍的に持っているアシルCoA合成酵素と呼ばれる脂肪酸代謝酵素の遺伝子であること,この遺伝子が何度も重複を繰り返しそのひとつが発光活性を持つルシフェラーゼに進化したことが明らかになった.微生物との緊密な相互作用も多くの昆虫の特徴である.例えば,アブラムシはバクテリオサイトと呼ばれる特別な細胞の内部に,細菌ブフネラを共生させ,両者はお互い相手なしでは生存が不可能なほどの絶対的な相互依存関係にある.われわれは,エンドウヒゲナガアブラムシ Acyrthosiphon pisum とその共生バクテリア Buchnera aphidicolaの両方のゲノムを解読した.その結果,アミノ酸等栄養の生合成に関わる遺伝子セットが宿主昆虫と共生細菌の間で相補的な関係になっており,栄養のギブアンドテイクの相利共生がゲノムレベルで規定されていることを明らかにした.また,宿主昆虫は共生細菌を制御する新規遺伝子も進化させていることも見いだした.