[P29-42] ウシSPP1遺伝子の経済形質に対する効果
霜降りを始めとするウシ経済形質は遺伝的要因に大きく影響されるため,DNAマーカーの開発は育種改良を行う上で非常に有益である.我々は経済形質に関連する新規候補遺伝子の一つとしてSPP1遺伝子を同定した.SPP1遺伝子は細胞外気質の主な成分である分泌型リン酸化糖タンパク質をコードしており,脂肪細胞の分化にも関与することが知られている.本研究では黒毛和種8個体を用いてSPP1遺伝子のエクソン領域およびプロモーター領域を対象とした多型探索を行った.その結果,第8エクソンにおいて第218番目のアミノ酸をスレオニンからメチオニンへと置換するミスセンス変異 (T218M) を同定した.また,プロモーター領域では連鎖する2個のSNPs (c.-1121C>T, c.-1117G>A) が同定され,これらは転写因子結合配列に影響することが示唆された.これらのウシ経済形質に対する効果を484頭の黒毛和種集団により検定した結果,T218Mは枝肉重量に有意な効果を示した (P = 0.0078).しかしながら,その効果は相加的ではなく,TM型がTT型およびMM型に比べ重かった.これは集団中にMM型の個体が少なかったためと考えられる.SPP1タンパク質の第218番目のアミノ酸は偶蹄目では高度に保存されていることから,本多型のウシ経済形質に対する効果はSPP1タンパク質の機能の変化に依ることが示唆された.