[S4-05] 小豆島のジビエ加工プロジェクト
これまではごく限られた土地で,限られた猟師たちが調理してきた野生獣肉(ジビエ)が,捕獲数の増加とともに全国各地で「捨てずに食べて活用しよう」という動きが活発になっております.
ただし,さまざまな問題点もあります.我々が普段食べている牛や豚肉の食肉処理加工場の衛生基準は,O-157などの人畜共通感染症の発生以来,非常に高くなってきました.設備や機械もどんどん新しくなり,管理システムも導入されています.
一方で,猪や鹿の食肉加工施設に関しては,現在さまざまな衛生的な指導のガイドラインができあがり整備されてきたところです.猟師たちは,自治体によっては有害鳥獣捕獲隊員に任命される場合もありますし,全国どこでも,罠のかけ方や,銃の保管,使用方法などについては厳しい指導と規制を受けております.が,肉にすることに関わる作業,止めさしの方法以降に関しては,そこまでの義務を負っていません.
豚も猪も肉として調理されて皿の上に乗るときは似たような姿になっているのですが,そこまでの過程が根本的に異なります.改善する部分は改善しつつ,違いが長所となる部分については,生かしていきたい.そして肉を実際に食べる方々には,これらの過程の違いも,知ったうえで美味しく食べていただきたい.
本講演では,そのような思いを込めて,小豆島で私が立ちあげている小さな獣肉処理場建設にあたり,直面してきた問題点などを説明させていただきます.
・個人が,少ない予算で,ただし衛生基準をできるだけ牛や豚の屠畜場に近づけるために,必要なこと.関わるスタッフ全員が技術と知識を高め,そして記録の必要性を理解する.
・自治体の援助に頼らず,クラウドファンディングで費用を集めた理由.自由にやりたいから.
・彷徨う予定地
・得られない住民の同意
・猟師との関係性ースラッグ弾を使用してくれるかどうか
・処理場から出る内臓と皮は,産業廃棄物になる.どう捨てるか.
・自治体により異なるが,小豆島の場合は業者引き取りとなると,香川本土に送るため,フェリー代金がかかってしまう.
・獣別に分けて発酵させて堆肥を作る?
・今後獣肉を誰にどう売っていくのか.
略歴: 1967年生まれ,作家・イラストレーター,小豆島ももんじ組合構成員.「身体のいいなり」で講談社エッセイスト賞受賞.そのほか著書に国内外の屠畜場をルポした「世界屠畜紀行」(角川文庫),「捨てる女」(朝日文庫)など.2010年に千葉県旭市で三匹の豚を飼養し,食べるまでの過程を追った「飼い喰い 三匹の豚と私」を上梓.その後小豆島に移住.狩猟免許取得.現在五頭のヤギと一頭の猪を飼養.