4:45 PM - 5:15 PM
[SY-II-04] 独自システムを活用した黒毛和牛一貫生産と販売戦略 ~ 外れる生産と外さない生産 ~
【はじめに】
2020年に創業60年を迎える弊社は家畜商から1978年食肉加工卸を開始.2005年より独自の食肉評価研究に取り組んでいる.また流通現場から得た情報や,研究成果を生産現場へ反映し一貫生産した黒毛和牛は2013年から海外輸出している.
【一貫生産】
ここで言う「一貫生産」とは,「生産から食肉加工後の正肉を売り切るまでの一連の行程」と定義付けている.かつての流通は,『生産~加工~販売』という生産目線だった.2007年には「技術革新~未来チャレンジ」を加え,全行程に第三者研究機関を交えた『売る』業務に『調べる・学ぶ』取組みをプラスし,生産現場へ多くの情報をもたらす仕組みを構築した.
【味の見える化と熟成肉】
味の見える化と称し,脂肪酸組成の測定(相馬光学製機器:オレイン酸含有量),赤身肉の性質測定((株)AISSY社製味覚センサーレオ:旨み数値の採用)を実施.脂肪酸は3,000以上,旨み数値は既に2,000以上のデータを収集しており,現在も測定を継続している.この膨大なデータを活用し独自『味マップ』を作成,霜降り基準とは異なる食の志向と牛肉の特性により好みの牛肉が選択可能なツールである.各種のデータ測定延長上で熟成肉の取組みを開始.枝肉を7週間熟成し,期間中の赤身肉性質変化を人工味覚センサーで確認.結果,7週間で『旨み数値』は約20%上昇した.これは,牛肉は寝かせると美味しくなる,を数値として可視化したものである.この熟成肉は,品質や食味に関するクレームは10年間ゼロである.熟成方法は,古来手法『枝枯らし』を採用.発生カビの性質を確認し,一般生菌数の実態も確認する.原料は黒毛和牛A-3骨付モモ.昨今流行したDABとは一線を画し,肉牛生産者,衛生管理や品質管理に配慮した食肉加工者,更には消費者に牛肉料理を届けるシェフ等,すべての行程で熟成肉への想いや目的・技術が合致して生まれた商品である.
【外れる生産と外さない生産】
測定データは,生産との関係が解明される事で『安定した肉質の再生産』を可能にするものと考える.出荷和牛と測定データの関係について外部機関と共同研究を開始した.〈参照:2016年日本畜産学会第121回大会Ⅷ29-05 (鳥取畜試 小江敏明・岡垣敏生・鳥山真)黒毛和種牛肉の煮肉法における官能評価と理化学分析値等との関係〉これにより,いわゆる交配『種雄牛』『母系血統』によって霜降りだけでなく食味にも影響を与える可能性が高い事を確認した.食味へ影響を与える可能性が高い交配に仮説を立て,独自視点による交配で検証を実施したものである.脂肪酸と赤身肉の性質は交配によって差が生まれ,『外れる(食味視点)種雄牛』や自社流通に不向きな種雄牛を確認し交配より排除.安定した肉質生産には『交配』が有効である事を確認.独自視点による再生産の仕組みを構築した事で,流行に左右される事なく『安定肉質流通の仕組み』を実現した.
【農場HACCPと畜産JGAP】
2005年,生産情報公表JAS認証を取得した.生産現場には,優れた職人では無く優れた仕組みの構築が重要と考える.生産の見える化として,原価管理の現場移行,交配管理の現場移行等を実施し現場主導の肉牛生産体制を構築.2018年3月農場HACCP認証を取得,次いで2019年3月畜産JGAP認証を取得.すべては弊社が目指すところの『美味しい,また食べたい』を実現するためであり,つまりはお客さまの声に最大限に応える事が可能な牧場へと成長した証と受け止めている.
【海外輸出は海外目線】
6年前より自社和牛を海外へ輸出している.安定した販売先獲得には約2年を費やした.結果,販売方針から『ロース肉の輸出』を優先する事を止めた.ひたすら日本の和牛食文化を伝えるため,という大きな使命がある事に気付いたゆえの決断である.現在,1頭フルセット,肩ロース,ウデ,バラ,モモ等調理法や各筋肉の特性等について実際に消費現場まで出向いてすべてを直接説明している.販売はA-4格付の輸出に限っている.食味分析データも開示し,物理的に脂肪含有量50%を目安とした商品で『食べた美味しさ』を基準としており,世界各国で地道にファンを獲得している.国内・海外問わず生産からの取組み,各種データ収集,消費現場のニーズを検証をする作業に取り組んだことにより.同業他社では不可能と思われる独自性高い流通システムが完成した.感覚的と言われる牛肉生産業界とは一線を画し,今後直面するであろう課題においても「仕組み=システム」づくりで解決していく所存である.
2020年に創業60年を迎える弊社は家畜商から1978年食肉加工卸を開始.2005年より独自の食肉評価研究に取り組んでいる.また流通現場から得た情報や,研究成果を生産現場へ反映し一貫生産した黒毛和牛は2013年から海外輸出している.
【一貫生産】
ここで言う「一貫生産」とは,「生産から食肉加工後の正肉を売り切るまでの一連の行程」と定義付けている.かつての流通は,『生産~加工~販売』という生産目線だった.2007年には「技術革新~未来チャレンジ」を加え,全行程に第三者研究機関を交えた『売る』業務に『調べる・学ぶ』取組みをプラスし,生産現場へ多くの情報をもたらす仕組みを構築した.
【味の見える化と熟成肉】
味の見える化と称し,脂肪酸組成の測定(相馬光学製機器:オレイン酸含有量),赤身肉の性質測定((株)AISSY社製味覚センサーレオ:旨み数値の採用)を実施.脂肪酸は3,000以上,旨み数値は既に2,000以上のデータを収集しており,現在も測定を継続している.この膨大なデータを活用し独自『味マップ』を作成,霜降り基準とは異なる食の志向と牛肉の特性により好みの牛肉が選択可能なツールである.各種のデータ測定延長上で熟成肉の取組みを開始.枝肉を7週間熟成し,期間中の赤身肉性質変化を人工味覚センサーで確認.結果,7週間で『旨み数値』は約20%上昇した.これは,牛肉は寝かせると美味しくなる,を数値として可視化したものである.この熟成肉は,品質や食味に関するクレームは10年間ゼロである.熟成方法は,古来手法『枝枯らし』を採用.発生カビの性質を確認し,一般生菌数の実態も確認する.原料は黒毛和牛A-3骨付モモ.昨今流行したDABとは一線を画し,肉牛生産者,衛生管理や品質管理に配慮した食肉加工者,更には消費者に牛肉料理を届けるシェフ等,すべての行程で熟成肉への想いや目的・技術が合致して生まれた商品である.
【外れる生産と外さない生産】
測定データは,生産との関係が解明される事で『安定した肉質の再生産』を可能にするものと考える.出荷和牛と測定データの関係について外部機関と共同研究を開始した.〈参照:2016年日本畜産学会第121回大会Ⅷ29-05 (鳥取畜試 小江敏明・岡垣敏生・鳥山真)黒毛和種牛肉の煮肉法における官能評価と理化学分析値等との関係〉これにより,いわゆる交配『種雄牛』『母系血統』によって霜降りだけでなく食味にも影響を与える可能性が高い事を確認した.食味へ影響を与える可能性が高い交配に仮説を立て,独自視点による交配で検証を実施したものである.脂肪酸と赤身肉の性質は交配によって差が生まれ,『外れる(食味視点)種雄牛』や自社流通に不向きな種雄牛を確認し交配より排除.安定した肉質生産には『交配』が有効である事を確認.独自視点による再生産の仕組みを構築した事で,流行に左右される事なく『安定肉質流通の仕組み』を実現した.
【農場HACCPと畜産JGAP】
2005年,生産情報公表JAS認証を取得した.生産現場には,優れた職人では無く優れた仕組みの構築が重要と考える.生産の見える化として,原価管理の現場移行,交配管理の現場移行等を実施し現場主導の肉牛生産体制を構築.2018年3月農場HACCP認証を取得,次いで2019年3月畜産JGAP認証を取得.すべては弊社が目指すところの『美味しい,また食べたい』を実現するためであり,つまりはお客さまの声に最大限に応える事が可能な牧場へと成長した証と受け止めている.
【海外輸出は海外目線】
6年前より自社和牛を海外へ輸出している.安定した販売先獲得には約2年を費やした.結果,販売方針から『ロース肉の輸出』を優先する事を止めた.ひたすら日本の和牛食文化を伝えるため,という大きな使命がある事に気付いたゆえの決断である.現在,1頭フルセット,肩ロース,ウデ,バラ,モモ等調理法や各筋肉の特性等について実際に消費現場まで出向いてすべてを直接説明している.販売はA-4格付の輸出に限っている.食味分析データも開示し,物理的に脂肪含有量50%を目安とした商品で『食べた美味しさ』を基準としており,世界各国で地道にファンを獲得している.国内・海外問わず生産からの取組み,各種データ収集,消費現場のニーズを検証をする作業に取り組んだことにより.同業他社では不可能と思われる独自性高い流通システムが完成した.感覚的と言われる牛肉生産業界とは一線を画し,今後直面するであろう課題においても「仕組み=システム」づくりで解決していく所存である.