[CPS1-04] 株式会社ニチレイフレッシュファームにおける暑熱ストレスによる生産成績への影響とその対策
地球温暖化に伴う、夏季の高温は養鶏に大きな損害を与えている。環境省によるIPCC第5次評価報告書では、20世紀末頃(1986年~2005年)と比べて、有効な温暖化対策をとらなかった場合、21世紀末(2081年~2100年)の世界の平均気温は、2.6~4.8℃上昇すると言われており、今後ますます夏季の暑熱ストレスによる影響が問題になると考えられる。暑熱ストレスは鶏の体温上昇を引き起こすことで、生産性や生理機能に悪影響を与え、飼料要求率や日増体量が悪化する。
株式会社ニチレイフレッシュファーム(以下NFF)は岩手県沿岸部最北端の洋野町に位置し、株式会社ニチレイフレッシュの独自性のあるブランド鶏の生産を行っている。NFF洋野農場では(独)家畜改良センター兵庫牧場が基礎鶏から育種改良した純国産鶏種「小雪」と「紅桜」を交配して生まれた純国産の鶏種である「たつの」を年間約140万羽生産しているが、当農場でも夏季の高温によって、生産性に大きな影響を受けている。プロダクションスコア(以下P.S)は養鶏の生産量レベルを図る指標のことであり、「(出荷体重㎏×育成率)÷(肥育日数×飼料要求率)×100」で示される。このP.Sを夏季と他の季節のピークと比較した場合、暑熱ストレスによる増体の減少や、死鳥の増加によってNFFでは約6.3%減する。特に、40日齢に近くなると鶏舎内の密度が上がるほか、飼料摂取量が増え、代謝熱の影響が大きくなるため、鶏舎内の環境に常に注意を払って養鶏を行わなければならない。
暑熱ストレスの生産性に与える影響を抑えるため、当農場は大きく分けて3つの対策を行っている。1つは鶏舎内の温度上昇の予防である。例えば、鶏舎前のアスファルトに石灰を撒き、鶏舎内の温度上昇を防いでいる。夏季の日中にはアスファルトの温度は60℃以上に上昇するが、石灰の散布により15℃迄温度の上昇を防ぐことができ、鶏舎への影響を低減できる。また、夏季は動力噴霧器による細霧を活用し、鶏舎内の温度を3-5℃低下させている。しかし猛暑日に湿度を上げると、かえって放熱が妨げられるため設備の使用に関しては随時調節が必要である。2つ目には、飼料の工夫である。日々の温度管理・予想を綿密に行い、気温が30℃を超えると予想される日には事前にクエン酸や重曹等を飲水添加し、暑熱ストレスの低減に努めている。そして最後に、鶏に熱がこもらない工夫である。鶏舎を頻繁に巡回し、鶏を動かす事で熱分散を行う。通常期は1日2~3回程度の巡回だが、夏季には1日4~5回鶏舎を見回り、鶏が腹部に熱を溜め込まないように鶏を動かしている。更に、出荷前段階での餌切りも行う。気温が高い日は50日齢前後であれば、その日は意図的に数時間給餌せず、代謝による熱生産を防ぎ、鶏が熱量を抱えないように工夫している。
暑熱対策は人的な労働量が増えるだけでなく、設備や水の使用など多くの投資も必要になる。現在は対策として上記に挙げたような飼育環境の整備が主体であるが、今後加速していく地球温暖化に際して、暑熱ストレスによる養鶏場への負担もまた大きくなっていくと予想されるため、暑熱ストレスの画期的な改善技術が開発されることが期待される。
株式会社ニチレイフレッシュファーム(以下NFF)は岩手県沿岸部最北端の洋野町に位置し、株式会社ニチレイフレッシュの独自性のあるブランド鶏の生産を行っている。NFF洋野農場では(独)家畜改良センター兵庫牧場が基礎鶏から育種改良した純国産鶏種「小雪」と「紅桜」を交配して生まれた純国産の鶏種である「たつの」を年間約140万羽生産しているが、当農場でも夏季の高温によって、生産性に大きな影響を受けている。プロダクションスコア(以下P.S)は養鶏の生産量レベルを図る指標のことであり、「(出荷体重㎏×育成率)÷(肥育日数×飼料要求率)×100」で示される。このP.Sを夏季と他の季節のピークと比較した場合、暑熱ストレスによる増体の減少や、死鳥の増加によってNFFでは約6.3%減する。特に、40日齢に近くなると鶏舎内の密度が上がるほか、飼料摂取量が増え、代謝熱の影響が大きくなるため、鶏舎内の環境に常に注意を払って養鶏を行わなければならない。
暑熱ストレスの生産性に与える影響を抑えるため、当農場は大きく分けて3つの対策を行っている。1つは鶏舎内の温度上昇の予防である。例えば、鶏舎前のアスファルトに石灰を撒き、鶏舎内の温度上昇を防いでいる。夏季の日中にはアスファルトの温度は60℃以上に上昇するが、石灰の散布により15℃迄温度の上昇を防ぐことができ、鶏舎への影響を低減できる。また、夏季は動力噴霧器による細霧を活用し、鶏舎内の温度を3-5℃低下させている。しかし猛暑日に湿度を上げると、かえって放熱が妨げられるため設備の使用に関しては随時調節が必要である。2つ目には、飼料の工夫である。日々の温度管理・予想を綿密に行い、気温が30℃を超えると予想される日には事前にクエン酸や重曹等を飲水添加し、暑熱ストレスの低減に努めている。そして最後に、鶏に熱がこもらない工夫である。鶏舎を頻繁に巡回し、鶏を動かす事で熱分散を行う。通常期は1日2~3回程度の巡回だが、夏季には1日4~5回鶏舎を見回り、鶏が腹部に熱を溜め込まないように鶏を動かしている。更に、出荷前段階での餌切りも行う。気温が高い日は50日齢前後であれば、その日は意図的に数時間給餌せず、代謝による熱生産を防ぎ、鶏が熱量を抱えないように工夫している。
暑熱対策は人的な労働量が増えるだけでなく、設備や水の使用など多くの投資も必要になる。現在は対策として上記に挙げたような飼育環境の整備が主体であるが、今後加速していく地球温暖化に際して、暑熱ストレスによる養鶏場への負担もまた大きくなっていくと予想されるため、暑熱ストレスの画期的な改善技術が開発されることが期待される。