The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

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ポスター発表

4. 形態・生理

4. Morphology/Physiology

[P4-21] 暑熱ストレス下の高温状態が乳腺上皮細胞の細胞内シグナル経路と乳腺胞形成に及ぼす影響のin vitro検証

〇Haruka Wakasa1, Yusaku Tsugami1, Fuya Kusano1, Takanori Nishimura1, Naoki Isobe2, Ken Kobayashi1 (1.Hokkaido Univ., 2.Hiroshima Univ.)

【目的】妊娠期に暑熱ストレスに曝された乳牛では泌乳期の乳量が低下する。妊娠期は乳腺上皮組織が発達する時期であり、暑熱ストレスによる乳腺上皮組織の形成不全が泌乳期の乳量を低下させる可能性がある。本研究では、暑熱ストレスによる乳房温度上昇が妊娠後期の乳腺胞形成へ及ぼす影響を調べるため、培養モデルによる検証を行った。【方法】マウス乳腺上皮細胞のオルガノイドをマトリゲルに包埋し、EGF存在下で培養することで、乳腺胞形成を誘導した。このモデルを37、39、41℃で培養し、温度上昇がオルガノイドの形態変化、細胞増殖、細胞内シグナル経路に及ぼす影響を調べた。また、スクラッチ法により乳腺上皮細胞の移動能も調べた。【結果】暑熱ストレスを模した41℃では、37℃、39℃と比較してオルガノイドの乳腺胞内腔形成が抑制された。増殖細胞マーカーのKi67の免疫染色像では、41℃で培養したオルガノイドでの増殖細胞が減少した。また、41℃では乳腺上皮細胞の移動能が低下し、細胞増殖や移動を調節するシグナル経路や熱ショックタンパク質(HSPs)の活性化レベルも変化した。さらに阻害剤によるHSPs活性化抑制は、41℃における乳腺胞形成阻害を悪化させた。以上より、妊娠後期の暑熱ストレスによる乳房温度上昇は、乳腺上皮細胞の細胞内シグナル経路を乱し、細胞増殖や細胞移動を抑制することで乳腺胞の形成不全を引き起こすと考えられる。