[P4-42] MyoD欠損ラットは新生子致死を呈する(Unexpected perinatal death of MyoD-deficient rats)
【背景】MyoDは、発生過程で筋細胞への運命決定を担う因子として1988年に同定された。MyoD欠損マウスでは骨格筋も形成され生後の成長も正常であることから、同様の機能をもつMyf-5との間で相互に機能を代償するものと理解されてきた。一方、MyoDを欠損するヒトでは生後間もなく死亡することが2016年に報告された。このことは広くマウスを用いて知られてきたMyoDの機能が種により必ずしも普遍的ではないことを示すものである。今回我々はMyoD機能の再検証を目的としてMyoD欠損ラットを作出し表現型を解析した。【方法と結果】CRISPR/Cas法により、2系統(+1 bp挿入及び-344 bp欠損)のMyoD欠損ラットを作製した。両系統においてMyoD欠損ラットは出生後数時間のうちに全てが呼吸困難で死亡した。帝王切開により得られた胎子の重量や大腿四頭筋の筋線維径はMyoD欠損ラットで野生型に比べ有意に減少していたことから骨格筋の発達不全が生じていると考えられた。また、MyoD欠損ラット胎子に由来する筋細胞の初代培養においては筋管細胞形成が全く認められず、筋細胞融合因子であるTMEM8CやMYMXの発現も野生型に比べて有意に低下していたことから筋芽細胞同士の融合が阻害されているものと思われた。【結論】MyoDをはじめとする筋分化制御因子の機能の普遍性については再検証する必要がある。