The 128th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

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企業協賛シンポジウム

Corporate Sponsorship Symposium 1

Mon. Mar 29, 2021 9:00 AM - 12:00 PM ライブ配信

座長:熊谷 元(京大院農)、川島 知之(宮崎大学農)

協賛:キユーピー株式会社
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パスコード:329374

[SSY1-02] 養豚および養鶏におけるエコフィードの利用 -資源の特徴と対象畜種の適性-

〇Mao Saeki1 (1.Nihon University, College of bioresource science)

現在の日本畜産における様々なエコフィード利用のきっかけは、2001年の食品リサイクル法の施行であり、その前後から研究・実用化が進んできた。その同年に国内ではじめてのBSEが確認されたことにより、主な動物性蛋白質飼料の反芻家畜への給与が禁止され、反芻家畜用のA飼料と、その他の飼料(B飼料)の製造・輸送・保管がすべて分離された。その結果、エコフィードの原料である食品残さの利用も、牛と、豚・鶏に分けた利用がなされてきた。

 そのなかで養豚における利用量は約20年で顕著に増加しており、養鶏における利用量は一定量で留まっている。養豚においてはリキッドフィーディングの導入が進んだことが大きく寄与している。食品残さは高水分の資源が多く、乾燥飼料化では経済的なメリットが得られなかったが、リキッド状で飼料化して豚に給与することで利用可能な対象の資源が拡大した。一方、養鶏においては、配合飼料用の乾燥化飼料はエコフィードとして一定の利用があるものの、養鶏用飼料全体に占める現状量としてはほんの数パーセントと考えられる。両者の代表的な事例を紹介したい。

 食品産業全体からの原料の食品残さ発生量と飼料としての利用量をみると、H29年の発生量1,737万トンのうち、913万トンが飼料として利用されていると推定されている(H31年エコフィードをめぐる情勢、農水省)。実はこれは前年(H28年)にくらべて、発生量として約200万トン減少しており、飼料利用量としては約100万トンの減少である。社会全体としての発生量がわずかに減少に転じつつあり、そのなかの飼料としての利用割合が上昇していると認識している。その中身の食品残さ自体も常に新しい資源が現れ、また消える資源も多く、常に変動があるなかでエコフィードとして活用されている。それらのなかで、ある程度の発生量の変動や栄養成分の変動があっても養豚用として利用する技術は確立しており、どうしても資源として利用が難しいものが活用されずに残りつつある。具体的には粗脂肪含量の多い資源が養豚用としては活用されずに廃棄されているものの、これは高エネルギー飼料として養鶏への活用が期待されており、その研究成果を紹介する。また養鶏用配合飼料への親和性が高いと考えられる資源もあり、さらに日本人の食生活の変化に伴い、色素や機能性成分を含んだ現代型の食品残さも複数紹介したい。

 養豚においては、デンプン系とタンパク質系の資源は活用が進んでいるが、各地の飼料製造事業所では、それぞれ目的に応じて様々な手法で飼料化をおこなっており、全国各地に分布するようなオカラのような基本的な食品残さであっても、乾燥化、リキッド化、サイレージ化されている。さらに各地方に特有の素材は液状から固形、栄養成分もバラエティ豊かなため、一定の教科書的なマニュアルはないが、いくつかの類型を紹介する。

 以上のほかに、現在、豚・鶏においてエコフィード利用が進んできた状況がストップして、最悪の場合には2000年の時点へ逆行しかねない事態が生じている。2018年9月からの国内におけるCSF(豚熱)の発生拡大とアジア各国でのASF(アフリカ豚熱)の大流行をうけ、農水省によりエコフィードの取り扱いに関する基準強化案が2021年4月から施行される。ポイントは2点あり、1.加熱処理を義務付ける対象素材の拡大と、2.その加熱水準の上昇である。1は現在「生肉を含む可能性のある素材」が対象だが「肉を扱う工場などから出た肉に触れた可能性がある素材」へと大幅な拡大であり、2は現在のCSFの防疫指針に準じた「80度以上3分以上」という加熱水準から「撹拌しながら90度以上60分以上」を加熱処理を義務付ける。1では、弁当工場やパン製品工場のほとんどが対象となってしまい、弁当残さや、総菜パン系の飼料利用拡大に制限がかかる。2では、燃料使用量の経費増大と時間当たりの処理量の減少が起こるため、これまでのエコフィード利用のメリットがなくなるため、今後の利用に重大な影響を及ぼす可能性が高い。以上の経過も含め、2021年3月時点での状況を報告したい。

略歴:1997年 北里大学大学院修士課程修了、2000年 日本大学大学院博士課程退学、2002年(独)科学技術振興機構重点研究支援協力員、2005年 日本大学生物資源科学部助手、2017年 同教授