[II-15-16] 黒毛和種の採卵性形質と枝肉形質における遺伝相関の推定
【目的】演者らはこれまでに、黒毛和種雌牛における採卵性形質の遺伝率を推定し、その遺伝的改良の可能性を報告してきた。一方、採卵性形質に関する選抜の際には、枝肉形質との遺伝的関連性を事前に調べ、枝肉生産に対する影響を確認しておく必要があると考えられた。本研究では、雌牛の採卵性形質と肥育牛の枝肉形質との遺伝相関を推定した。【方法】2008年から2018年の間に収集された、全農ET研究所で飼養されている供卵牛1,532頭の反復採卵成績19,155件、その肥育後代牛の枝肉成績1,448件および5,410頭分の血統情報を用いた。採卵性形質として総回収卵数および高品質胚数を取り上げ、枝肉形質として枝肉重量、ロース芯面積、バラの厚さ、皮下脂肪の厚さ、歩留基準値およびBMSナンバーを取り上げた。分散成分の推定は、２形質アニマルモデルAI-REML法により行った。【結果】枝肉形質との推定遺伝相関は、総回収卵数で-0.05~0.04、高品質胚数で-0.14~0.04の範囲であった。その標準誤差は0.10~0.14であったことから、採卵性形質と枝肉形質は遺伝的にほぼ無相関と考えられた。したがって、採卵性形質に関する供卵牛の選抜が肥育牛の枝肉成績に及ぼす影響は小さいと考えられた。ただし、今後記録数を増やした再分析を行い、推定結果の再現性を確認する予定である。