日本畜産学会第129回大会

講演情報

口頭発表

2. 遺伝・育種

育種・遺伝2

2021年9月15日(水) 12:40 〜 14:40 育種・遺伝 (オンライン)

座長:岡村 俊宏(農研機構畜産部門)、増田 豊(酪農大農食環境)、谷口 雅章(農研機構畜産研)

[II-15-25] 複数産次記録を持つ集団における初産記録のみを持つ個体記録の扱い方の検討

*岡村 俊宏1、石井 和雄1 (1. 農研機構畜産部門)

【目的】ブタの育種集団では母豚の更新によって、雌性繁殖記録数は産次を追う毎に減少する。そのため、初産記録のみを持つ個体(以下、P1)の記録が一定数データセットに含まれるが、それは永続的環境効果推定のバイアスとなりうる。そこで、P1の除外が遺伝的パラメーター(以下、GP)や育種価の推定に与える影響を、コンピューターシミュレーションによって検証することを目的とした。
【方法】1世代雄60頭雌240頭からなる閉鎖群集団を5世代作出した。雌性繁殖形質を想定し、雌のみ表型値を有し、分散を相加的遺伝子効果1、永続的環境効果1、誤差8とした。ある産次から次の産次へはランダムに1.5割除外するものと仮定し、8産までの記録を発生させた。P1を含めた場合と欠測とした場合の2つのデータセット(以下、それぞれFULL、P1NA)を作成し、それぞれにおいてAIREMLF90プログラムを用いて反復率モデルによってGPを推定し、そのGPによる推定育種価と真の育種価との相関を正確度とした。反復は500回行った。
【結果】両データセットにおいて、GPの推定値は真値とほぼ同値で、P1はGP推定のバイアスにはならなかった。また、推定育種価の正確度はFULLが0.59、P1NAは0.57であった。以上より、初産のみを持つ個体の記録であっても、データセットから除外しない方が望ましいことが示唆された。