[III-15-04] 卵巣除去処置および子宮上皮特異的Lifr欠損マウスによる着床遅延
哺乳類の一部では,胚が一定期間着床しない「着床遅延」が起こるが,詳細なメカニズムは不明である.本研究では,外科的卵巣除去あるいは子宮上皮特異的Lifr欠損マウス(Lifrd/d)を用いて着床遅延について調べた.①野生型雌マウスの膣栓確認日をDay1とした.Day3の夕方に卵巣を除去し,プロジェステロンカプセルを皮下に埋め,約6日間の着床遅延(6 days delay:6D)を誘起した(Day4+6D).また,それらの子宮組織を野生型Day4.25(着床前日)マウスと比較した.②マウス胚着床に必須な白血病阻止因子(LIF)の受容体Lifrに着目し,Lifrd/dマウスを作製し,着床遅延について調べた.①Day4+6Dの子宮を灌流すると胚盤胞が回収された.また,Day4+6Dの子宮組織は野生型Day4.25と形態学的に違いが見られなかった.さらに,野生型Day4.25の子宮上皮では,LIFの下流に存在するStat3のリン酸化が検出されたが,Day4+6Dでは見られなかった.②Lifrd/dマウスでは,Day8・10・12の子宮を灌流すると胚盤胞が回収され,子宮上皮でのリン酸化Stat3のシグナルは認められなかった.卵巣除去およびLifrd/dマウスの両方で着床遅延が認められた.また子宮上皮におけるLIFシグナル下流のStat3リン酸化が,子宮の胚受容能獲得に関与していると考えられた.