The 129th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

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メインシンポジウム

「畜産学のレジリエンスと進化」
Resilience and Evolution of Animal Science (REAS)

Tue. Sep 14, 2021 2:30 PM - 6:00 PM メインシンポジウム (オンライン)

Chairperson:Hiroshi Yoneyama, Haruki Kitazawa, Michiru FUKASAWA, Hara Kenshiro, Kentaro Kato, Sanggun Roh

3:00 PM - 3:40 PM

[MS-02] 【基調講演】
畜産学に裏打ちされた畜産業の展望

*Noboru MANABE1 (1. NLBC)

最終氷河期が終わるまで人類は狩猟・採取生活を送っていました。約1万年前に氷河期が終わってから野生動物を家畜化したり野生植物を栽培植物化することをはじめることで安定して食料を得ることができるようになりました。その後の人類の長い歴史を紐解くと、その時代その時代の最先端の科学技術を活用して食料を増産して文明を築いてきました。約100年前になって「水と石炭と空気からパンを作る方法」が発明されました。ハーバー博士とボッシュ博士が、空気中の窒素をアンモニアに固定し、農作物を育てるのに不可欠な窒素肥料を人工的に合成できる方法を見出しました(化学肥料の誕生)。これによって安価な肥料を安定して供給できるようになり、農作物の収穫量が革命的に増加して人口が飛躍的に増加しました。しかしながら、化学肥料の合成には大量のエネルギーの消費と二酸化炭素の排出が伴うので、近年地球規模で進行している気候や環境の変動に対応した二酸化炭素軽減の観点から、大量の二酸化炭素排出をすることなくアンモニアを製造できる手法が求められてきていました。最近、低エネルギー消費で低二酸化炭素排出によるアンモニア製造法が発明されました。このように基盤的な科学は常に人類の繁栄と幸福に貢献してきました。本講では、畜産業領域における基盤的科学である畜産学の研究成果に裏打ちされた近未来の発展を展望します。 従来のように単純に増産を目指すものではなく、環境負荷を軽減と高品質化を実現することで家畜生産を持続可能なものとするパラダイムシフト的生産技術革新が進行しています。(1)地球規模で拡散する新興家畜伝染病・人獣共通伝染病を防疫できる飼養衛生管理システムの再構築、(2)遺伝子編集技術などの最新科学テクノロジーを駆使し、家畜改良の数値目標を掲げた素早い高耐病性・高効率生産品種の創出など、(3)AI(artificial intelligence)技術を活用した畜産品の安全性の担保するために生産と流通を個体別にフォローできるトレーサビリティ・システム、自動化した飼養衛生管理、搾乳、放牧システムなどの構築、(4)グローバルレベルのアニマル・ウェルフェア規格を満たしている新たな飼養衛生管理システムの構築などの多面的な改革が喫緊の課題として取り組まれています。我が国の畜産業領域ではグローバル化が急速に進行しており、地球規模での激しい競争環境の中で生き残りをかけた戦いを強いられています。世界トップレベルの長寿国の実現に貢献してきた高品質の動物性食品の供給に貢献し続けてきた我が国の畜産業を活性化するためには、今後とも社会に貢献し続けることを支える基盤科学としての畜産学を充実させることが欠かせません。 略歴:1983年4月日本農薬(株)社員、1988年8月パストゥール研究所研究員、1992年4月京都大学農学部助教授、2004年7月東京大学大学院農学生命科学研究科教授、2011年4月家畜改良センター理事、2015年4月大阪国際大学学長補佐教授、著書:The Ovary 2nd ed., Academic Press、受賞:欧州細胞病理学会奨励賞(1990年)、日本畜産学会賞(1998年)