[AW-01] 家畜・家禽における栄養生理学ならびに行動学研究の推進と後進の育成
1985年3月に名古屋大学大学院農学研究科博士課程後期課程を修了し,農学博士の学位を取得した.1988年5月に名古屋大学に助手として採用され,1997年5月に九州大学助教授,2000年3月に教授に昇進した.この間,1992年4月から1年間と1994年5月から7月は,連合王国リバプール大学の客員研究員として研究活動を行った.
主な研究業績を概説すると以下の通りである.
① ニワトリの腸内細菌および消化管生理に関する研究
無菌ヒナと通常ヒナをエネルギーとタンパク質代謝の面から比較した.腸内細菌が存在する通常ヒナではエネルギー要求量が高く,飼料エネルギーが十分でない場合,飼料タンパク質の一部がエネルギーとして優先的に使われるため,飼料タンパク質がヒナの成長に有効利用されないことを解明した.続いて,ニワトリの消化管の長さは体長を基準とすると短いにもかかわらず高い消化能力を持つのは,神経伝達物質による素早い膵臓消化酵素分泌制御が行われるからであり,消化管の内分泌による制御は重要でないことを示した.
② 飼料成分のエネルギー代謝等に関する研究
単糖のソルボースはエネルギー価値が低く,また,早期に満腹感を誘導し,飼料摂取量を減少させることを明らかにした.さらに,糖尿病の発症の前後にソルボースを給与すると症状改善に有効であることを認めた.次に,環状構造の中に物質を取り込む性質を有するシクロデキストリンのうち,グルコースが環状に6個結合したβ-シクロデキストリンのみに,デンプン分解酵素であるアミラーゼの活性を抑え摂食抑制効果があることを明らかにした.
脂質の研究では,中鎖脂肪摂取による体脂肪の減少は,摂食抑制作用に加え,代謝エネルギーならびに正味エネルギーが低いことに起因することを解明した.また,中鎖脂肪の摂食抑制作用は嗅覚と味覚を介した嗜好性の低さが一因であり,フレーバーを利用することで嗜好性が改善されることを示した.さらに,中鎖脂肪の摂食抑制作用や消化管通過速度遅延作用には,中鎖脂肪から産生されるケトン体が関与することも認めた.このほか,プロスタグランジンの脂肪肝抑制作用なども明らかした.
③ ニワトリの摂食行動に関する研究
摂食を抑制するあるいは亢進する神経ペプチドを数多く報告し,その中には,哺乳類とニワトリの間では摂食亢進と摂食抑制の効果が全く逆のものや,全動物種で初めて摂食亢進因子として明らかとなったものがある.さらに,ニワトリヒナの摂食行動では抑制系が亢進系よりも上位に位置することを提唱した.また,摂食量が極めて多い肉用専用種(ブロイラー)では,卵用専用種に比べ脳内の摂食抑制系ペプチドの発現量が減少しており,育種改良による相違を明らかにした.さらに,ブロイラーの脳では摂食抑制ペプチドの作用が弱いことや,摂食抑制ペプチドの作用に拮抗する脳内制御因子を量的に多く産生することも示した.
④ 栄養素と睡眠・ストレスなどの行動制御機能に関する研究
脳内のアミノ酸とその代謝産物の多様な行動制御機能の研究に取組み,L-リジン,L-アルギニン,L-オルニチン自体やその代謝産物が鎮静・催眠作用を持つことを解明した.続いて,リン脂質であるホスファチジルセリンに鎮静・催眠作用があり,L-セリン自体やL-セリンを構造に配位する化合物にも鎮静・催眠作用があることを明らかにした.さらに,脳内のL−セリン含量が低く,うつ様行動を示すラットにL−セリンを投与することにより,うつ様行動が緩和できることを実証し,うつ様状態における「脳内アミノ酸代謝異常説」を提唱した.セリン関連物質を含有する新規の睡眠改善に関する機能性表示食品の研究開発にも貢献している.
学会活動については,日本畜産学会では,代議員,理事,編集委員,日本畜産学会賞・奨励賞受賞候補者選考委員会委員として貢献した.また,第17回アジア・大洋州畜産学会議ならびに日本畜産学会第128回大会の大会長を務めた.関連学会では,日本家禽学会会長,日本暖地畜産学会会長,家畜栄養生理研究会会長,日本ペット栄養学会副会長などを歴任し,畜産学ならびに関連する学問分野の発展に寄与してきた.
社会的貢献としては,国や県の各種機関の委員会に委員または評価委員として参画し,畜産の研究推進に大きく貢献してきた.
教育面では,30数年にわたって学生の卒論指導にあたり,大学院学生の研究指導においては,多く学生に対して修士論文の指導を実施し,海外や他大学からの進学者を含めて主査として20名,副査として34名に博士号を授与した.指導した学生のうち6名が日本畜産学会奨励賞,9名が日本畜産学会優秀発表賞を受賞している.また,多数の大学において非常勤講師として,栄養学や行動学に関連する講義を行い,学部および大学院学生の指導を行ったほか,他大学の博士論文の副査も務めた.
主な研究業績を概説すると以下の通りである.
① ニワトリの腸内細菌および消化管生理に関する研究
無菌ヒナと通常ヒナをエネルギーとタンパク質代謝の面から比較した.腸内細菌が存在する通常ヒナではエネルギー要求量が高く,飼料エネルギーが十分でない場合,飼料タンパク質の一部がエネルギーとして優先的に使われるため,飼料タンパク質がヒナの成長に有効利用されないことを解明した.続いて,ニワトリの消化管の長さは体長を基準とすると短いにもかかわらず高い消化能力を持つのは,神経伝達物質による素早い膵臓消化酵素分泌制御が行われるからであり,消化管の内分泌による制御は重要でないことを示した.
② 飼料成分のエネルギー代謝等に関する研究
単糖のソルボースはエネルギー価値が低く,また,早期に満腹感を誘導し,飼料摂取量を減少させることを明らかにした.さらに,糖尿病の発症の前後にソルボースを給与すると症状改善に有効であることを認めた.次に,環状構造の中に物質を取り込む性質を有するシクロデキストリンのうち,グルコースが環状に6個結合したβ-シクロデキストリンのみに,デンプン分解酵素であるアミラーゼの活性を抑え摂食抑制効果があることを明らかにした.
脂質の研究では,中鎖脂肪摂取による体脂肪の減少は,摂食抑制作用に加え,代謝エネルギーならびに正味エネルギーが低いことに起因することを解明した.また,中鎖脂肪の摂食抑制作用は嗅覚と味覚を介した嗜好性の低さが一因であり,フレーバーを利用することで嗜好性が改善されることを示した.さらに,中鎖脂肪の摂食抑制作用や消化管通過速度遅延作用には,中鎖脂肪から産生されるケトン体が関与することも認めた.このほか,プロスタグランジンの脂肪肝抑制作用なども明らかした.
③ ニワトリの摂食行動に関する研究
摂食を抑制するあるいは亢進する神経ペプチドを数多く報告し,その中には,哺乳類とニワトリの間では摂食亢進と摂食抑制の効果が全く逆のものや,全動物種で初めて摂食亢進因子として明らかとなったものがある.さらに,ニワトリヒナの摂食行動では抑制系が亢進系よりも上位に位置することを提唱した.また,摂食量が極めて多い肉用専用種(ブロイラー)では,卵用専用種に比べ脳内の摂食抑制系ペプチドの発現量が減少しており,育種改良による相違を明らかにした.さらに,ブロイラーの脳では摂食抑制ペプチドの作用が弱いことや,摂食抑制ペプチドの作用に拮抗する脳内制御因子を量的に多く産生することも示した.
④ 栄養素と睡眠・ストレスなどの行動制御機能に関する研究
脳内のアミノ酸とその代謝産物の多様な行動制御機能の研究に取組み,L-リジン,L-アルギニン,L-オルニチン自体やその代謝産物が鎮静・催眠作用を持つことを解明した.続いて,リン脂質であるホスファチジルセリンに鎮静・催眠作用があり,L-セリン自体やL-セリンを構造に配位する化合物にも鎮静・催眠作用があることを明らかにした.さらに,脳内のL−セリン含量が低く,うつ様行動を示すラットにL−セリンを投与することにより,うつ様行動が緩和できることを実証し,うつ様状態における「脳内アミノ酸代謝異常説」を提唱した.セリン関連物質を含有する新規の睡眠改善に関する機能性表示食品の研究開発にも貢献している.
学会活動については,日本畜産学会では,代議員,理事,編集委員,日本畜産学会賞・奨励賞受賞候補者選考委員会委員として貢献した.また,第17回アジア・大洋州畜産学会議ならびに日本畜産学会第128回大会の大会長を務めた.関連学会では,日本家禽学会会長,日本暖地畜産学会会長,家畜栄養生理研究会会長,日本ペット栄養学会副会長などを歴任し,畜産学ならびに関連する学問分野の発展に寄与してきた.
社会的貢献としては,国や県の各種機関の委員会に委員または評価委員として参画し,畜産の研究推進に大きく貢献してきた.
教育面では,30数年にわたって学生の卒論指導にあたり,大学院学生の研究指導においては,多く学生に対して修士論文の指導を実施し,海外や他大学からの進学者を含めて主査として20名,副査として34名に博士号を授与した.指導した学生のうち6名が日本畜産学会奨励賞,9名が日本畜産学会優秀発表賞を受賞している.また,多数の大学において非常勤講師として,栄養学や行動学に関連する講義を行い,学部および大学院学生の指導を行ったほか,他大学の博士論文の副査も務めた.