The 130th Annual Meeting of Japanese Society of Animal Science

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シンポジウム

未来をになうAnimal Scienceの発展と展開

Sat. Sep 17, 2022 1:30 PM - 6:00 PM Zoom会場1 (オンライン)

Chairperson: Kei Hanzawa(Faculty of Agriculture, Tokyo University of Agriculture)

2:30 PM - 2:50 PM

[CPS-04] 6次産業化を目指したホロホロチョウ生産

*Hiroshi Ogawa1 (1. Yamashina Institute for Ornithology)

ホロホロチョウは、西アフリカ原産のキジ目ホロホロチョウ科の鳥で、原産地で貴重なタンパク質供給源として重要視されているだけでなく、肉用家禽としてフランス、イタリア、東欧などで生産が盛んである。日本では一般に入手しづらく高級食材としてレストランなどで提供されたり、燻製として高値で販売されたりする例が見受けられる。また、ホロホロチョウ卵については市場にはほとんど流通していない。しかしながら、ホロホロチョウ卵は、卵殻が厚くて硬いこと、卵黄比が高こと、カラザが無い(見えない?)こと、卵黄中のコレステロール含料が鶏卵より少ないこと、オレイン酸やリノレン酸などの不飽和脂肪酸を多く含むことなどの食用卵としてすぐれた特徴を有しているが、卵用家禽としての利用はほとんど行われていない。近年、集約的な大規模養鶏経営だけでなく、地方の品種を用いた地域ブランドの創生が全国で試みられている。この場合,付加価値を高めるためには他との差別化が必要であり,様々な日本在来鶏が素材として用いられている。この点でホロホロチョウは,卵生産と肉生産の双方の素材として有望であり、生産から加工販売までの6次産業化の素材として適している。さらに,小規模な養鶏農家においても鶏の施設を流用することで、設備投資をすることなく飼育生産に取り組むことができる。そこで、6次産業化を目指したホロホロチョウ生産における諸課題に取り組んだ。
1).飼育・繁殖方法
①ホロホロチョウは繁殖期に番を形成することから計画的な増殖が難しく、産業的な雛生産の現場では人工授精による繁殖が行われている。液状精液での人工授精は、3~5倍希釈で7~5日に一度実施することで良好な受精率が得られる。液状精液を用いた人工授精は農家単位での実施が可能であるが、繁殖期が限定されるのが課題である。凍結精液による人工授精法は、ジメチルホルムアミドを凍結保護剤とした方法が確立されているが、凍結時の厳格な温度管理が必要であり、農家レベルでの実施は難しい。一方、孵化時期により冬季であっても産卵する個体が出現したことから、単飼で産卵率の高い夏季に人工授精を実施して繁殖させるのが効率的である。今後、年間並びに冬季の産卵成績を基に選抜することにより更なる産卵成績の向上が期待出来る。
②動物福祉を考慮すると平飼いでの群飼が望ましいことから、4羽の小規模な群での個体間の関係について調査した。ホロホロチョウを雄のみの群で飼育した場合、つつき行動による順位の形成が認められ、この順位は給餌器の占有時間の順位と一致していた。雌のみではつつき行動は認められない場合があったが、給餌器の占有時間には個体差が認められたことから、雌の個体間においても順位の存在が示唆された。雌雄2羽ずつの群飼の場合、雄同士のつつきあいによる劣位個体が群の中で最も給餌器の占有時間が短くなる傾向が認められた。なお、順位の高い個体は体重が大きい傾向が認められた。
2).早期雌雄鑑別方法 ①性染色体上に存在する遺伝子を用いた雌雄判別法を検討した結果、シギダチョウで雌雄判別可能なSpindlin遺伝子のプライマーを用いることにより、雌雄判別が可能であることが明らかとなった。
3).生産物の付加価値の向上
①健康志向の高い消費者に対するアピールするため、飼料中にサチャインチの種子の粉末を5%添加して給与したところ、肉(もも肉と胸肉)の総脂肪酸量(特に飽和脂肪酸量)が減少した。不飽和脂肪酸は、ω6不飽和脂肪酸は減少したが、ω3不飽和脂肪酸量が増加した。卵黄ではω3脂肪酸であるα-リノレン酸およびドコサヘキサエン酸等の不飽和脂肪酸含量が増加した。なお、ホロホロチョウ肉の一般成分は、サチャインチ粉末を給与したことによる違いは認められなかったが、ニワトリのブロイラーと比べると、低水分、高タンパク質であり、肉質は剪断力価(嚙みちぎりに要する力)が高かった。
4).ホロホロチョウ卵を用いた加工製品の開発
①ホロホロホロチョウ卵を用いた加工品としてプリンおよびカタラーナを試作販売した。

【略歴】 1978年 東京農業大学農学部畜産学科卒業 1980年 東京農業大学大学院農学研究科農学専攻博士前期課程修了 修士(農学) 2005年 東京農業大学大学院農学研究科畜産学専攻 博士(畜産学) 1980年~2022年 東京農業大学短期大学農場、短期大学部生物資源技術学科、農学部畜産学科、バイオセラピー学科、生物資源開発学科勤務 2021年~2022年 山階鳥類研究所スペシャルアドバイザー 2022年~ 山階鳥類研究所 所長