形態・生理1

[IV-16-02] ウマ赤血球浸透圧脆弱性に対する溶質無機イオンの影響

*Kyohei Chiba¹, Katsuki Sumiyoshi¹, Hiromi Hara², Takashi Hirano², Kei Hanzawa² (1. Tokyo University of Agriculture , 2. Tokyo Univ of Agriculture)

【目的】ウマ赤血球浸透圧脆弱性（低張NaClに対する溶血率）の個体差の原因を解明する一助として，溶血率に個体差が認められる5頭の間で溶質無機イオンが溶血率に及ぼす影響を比較した．
【材料・方法】大学馬術部所属の競技馬5頭（個体HB：15，LC：15，PG：10，SS：18，TA：15歳）から2週間隔で計3回（PGのみ4回）採取した頸静脈血から調整した赤血球の低張NaNO₃，NaClおよびKCl溶液に対する溶血率（1%浮遊液，室温，30分後）を測定し，MCF（50%溶血となる溶質のモル濃度）を算出した．MCFの溶液間差および個体間差をTukey’s testで確認した（p < 0.05）．
【結果】個体LCを除く4個体のMCFはNaNO₃ < NaCl < KClの順に高かったが，個体LCではNaNO₃ < NaCl = KClであった．また，各個体のMCFはNaNO₃：SS^x = HB^x = PG^x ≦ TA^xy ≦ LC^y，NaCl：SS^x ≦ HB^xy ≦ PG^y = TA^y < LC^z，ならびにKCl：SS^x =HB^x ≦ PG^xy = TA^xy ≦ LC^yの順に高かった（x < y < z）．
【考察】K-Cl共輸送体(KCC)による容積収縮能に対しNaNO₃は促進的に，逆にKClは抑制的に働いている可能性が示唆された．また個体LCでは特にNaCl溶液中でのKCCの活性が他4個体より低いことが示唆された．