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[VII-20-29] 母牛の低栄養は胎子の肝臓における糖代謝、尿素回路、ステロイド代謝に影響を及ぼす
【目的】黒毛和種妊娠牛の栄養制限は、その胎子骨格筋の成長と代謝に影響を及ぼす(第129回大会)。全身代謝の中心である肝臓においても、低栄養環境下の胎子で糖および脂質の代謝が変化すると考えられた。本研究では、黒毛和種牛の胎子肝臓における低栄養環境の影響について遺伝子発現と代謝物の網羅的解析により検討した。【方法】全栄養要求量の60%(LN;5頭)または120%(HN;6頭)の飼料を給与した妊娠牛から、受胎後8.5カ月目の胎子の肝臓を採取した。遺伝子および代謝物の網羅的解析には、各区4頭ずつの胎子の試料を用いた。【結果】マイクロアレイ解析では、G6PC、PCK1、FBP1等の糖代謝関連の遺伝子、ADH4、EHHADH、ANGPTL4等のPPARシグナリングや脂肪酸代謝に関連する遺伝子、ステロイド生合成に関わるFDPS、HMGCS2、尿素回路に関するARG2、CPS1等の遺伝子の発現がLN胎子群で低下した。発現差異の傾向はPCRでも認められた。メタボローム解析ではアスパラギン酸、UDP-Glc/Gal、グルコン酸関連化合物等の含量が低下した。遺伝子オントロジーやパスウェイ解析により、これらLN胎子群で発現が低下した遺伝子群が糖代謝、ステロイド合成、尿素回路に関与することが裏付けられた。母牛の妊娠時低栄養が胎子の肝臓で糖・脂質の代謝のほか、肝臓特異的な機能に影響を及ぼすことがわかった。