[EWS2-3] 結核菌北京株のゲノム解析と組織透明化/3次元イメージング「CUBIC」による抗酸菌感染の生体内モニタリング
結核菌北京株は,日本を含む東アジア地域の高蔓延株であり,病原性や薬剤耐性化傾向が強いことが指摘されている。これまで人に感染した結核菌北京株のゲノム変異率については,明らかにされていなかった。本研究では,結核集団感染を発端に,異なる期間を経て発症した複数の患者より結核菌北京株を分離し,全ゲノム解析を施行した。その結果,結核菌北京株のゲノム変異率は,他系統の結核菌よりも高いことが判明した。高頻度のゲノム変異率は,結核菌北京株の高い病原性や薬剤耐性率の要因である可能性が示唆された。これまで抗酸菌と宿主応答の体内動態を知る方法として,透明であることからゼブラフィッシュとMycobacterium marinumを用いたモデルが報告されているが,魚類と脊椎動物では免疫システムが異なる。近年開発された組織透明化/3次元イメージング「CUBIC」では,希少の細胞を生体内構造の中で,特定しその数を算出できることが報告された。本研究では,蛍光蛋白を発現する遺伝子組み換え抗酸菌(Mycobacterium tuberculosis variant BCG,Mycobacterium avium,Mycobacterium tuberculosis H37Rv)とCUBIC技術を用いて,マウス体内における抗酸菌症の動態を詳細かつ3次元的に解析した。その結果,マウス体内で菌単体のレベルで細菌を検出でき,感染後臓器のホモジネートを培地に播種した後の集落形成数(CFU)で算出した菌数とCUBIC技術を用いて算出した菌数が相関することが明らかになった。また,菌種による体内動態の違いも確認された。CUBIC技術は,現在難治性の抗酸菌症の治療や病態解明にとって大きな貢献をする可能性が示唆される。