[JRS-5] アルコール濃度と植物抽出液の抗菌効果
新型コロナウイルス感染症の流行により,消毒液の需要が高まり,アルコール消毒液の入手が困難な状況が生じた。市販のアルコール消毒液は,商品によって濃度が異なっているため,本研究ではアルコール濃度を減らしつつ抗菌効果が維持できる濃度を検討した(実験①)。さらに添加物を加えることで,低アルコール濃度でも抗菌効果を高めることができないか調査するため,伝承薬として抗菌作用が期待できる植物抽出液を添加して,抗菌効果を比較した(実験②)。実験①では,厚生労働省のガイドラインに基づいた方法で手洗いを実施し,同条件下で机を触った。その後,30%,50%,70%のエタノール水溶液を3mLずつ手にとり,10秒間均一になるよう掌だけにしみこませ,寒天培地に掌を押し付けた。採集した細菌・真菌類は,約48時間,37℃の恒温条件下で培養した。その結果,エタノール濃度70%,50%,30%の順に発生量が少なくなる傾向にあった。また,エタノール濃度50%と70%では,抗菌効果に大きな差が見られた。実験②では,実験①では効果が低くなった30%エタノールで乾燥させた植物を抽出し,植物抽出液として利用した。植物材料は,ヒガンバナ,ドクダミ,カイワレダイコン,ヨモギの根・葉・茎を用いた。実験では,手の常在菌を水で洗い流したものに,それぞれの植物抽出液と混ぜて寒天培地で培養した。ヒガンバナはアルカロイドを含む有毒植物として知られている。特に根は,ヒガンバナの中で最も毒性が強い部分と報告されており,抗菌性も高いと仮説を立てた。一方で,カイワレダイコンやヨモギの葉の可食部であるため,ヒトにとっての毒性は無いと考えられ,細菌・真菌類への抗菌性も低くなると予想した。