第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

1 微生物の分類

[ODP1B] b. 微生物の検出・同定の技術

[ODP-004] GBS検査を改善するエンドライシンの新規利用法検討

○小方 雅也1,松井 秀仁2,那須川 忠弥1,内山 伊代1,東出 正人3,阪口 雅弘1,花木 秀明2,内山 淳平1 (1麻布大・獣医・微生物,2北里大・大村研・感染制御,3江東微生物研究所)

【目的】B群連鎖球菌(GBS)は,妊婦から新生児に垂直感染し,重篤感染症を引き起こす。現在,妊婦の膣スワブから増菌培養を行い,同定試験を行うGBS検査が推奨されている。しかしながら,増菌培養においてEnterococcus faecalis(EF)が増殖し,同定試験に偽陰性を生じる問題がある。我々は,EFを特異的に殺菌するエンドライシンLYSを増菌培養液添加し,EFの生育を抑えることを考案した。本研究では,LYSの有効を(I)実験的な偽陰性モデル,および(II)臨床検体で評価した。
【方法】Granada液体培地にLYS(0.1mg/ml)あるいはPBS添加し,増菌培養後,同定試験を行った。(I)膣から分離したEF 30株 及び GBS 7株 から1株ずつ共培養(計210の試験)した。(II)548検体の膣スワブを使用した。
【結果と考察】(I)LYSを添加した場合,99 %の試験(208/210)でGBSを検出した。一方,PBSを添加した場合,GBSは検出されなかった(0/210)。統計的な検討を行ったところ,有意なLYSの効果があった。(P < 0.01, McNemar検定)。また,(II)PBSを添加した培地ではGBS陽性率が15.7 %(86/548検体)あり,一方,LYSを添加した培地ではGBS陽性率が17.9 %(98/548検体)であった。LYSの効果は,統計学的に有効であった(P < 0.01, McNemar検定)。
【結語】増菌培養の際にLYSを添加すると,検査精度が向上することが示された。