第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

2 微生物の生態

[ODP2A] a. 生態・共生・環境微生物

[ODP-012] 下水処理場からシリンジ分離法を用いて株化した繊毛虫とレジオネラの相互作用

○川代 愛梨1,大沼 零士1,大久保 寅彦1,タパ ジーワン2,山口 博之1 (1北大院・保科・病態解析,2北大・人獣リサーチセンター)

【背景・目的】レジオネラ属菌は河川や土壌などの環境中に存在し,レジオネラ肺炎の原因となる。以前の研究でレジオネラとアメーバとの間に相互作用があることが分かっているが,同じ原生生物であり65,000種にも及ぶ繊毛虫がレシオネラの生態にどのような影響を与えているのかよく理解されていない。本研究では多彩な繊毛虫の存在が予想される下水処理場(札幌)流入水から繊毛虫を株化しLegionella pneumophilaとの相互作用を検討した。
【材料・方法】下水処理場から採取した水サンプルをペレット化して液面に触れるようにPage’s amoeba salineで満たしたシリンジをセットし,遊泳運動によりシリンジ内に移動した繊毛虫を株化した(シリンジ分離法)。シークエンス解析で種同定をしたのちSonneborn’s paramecium mediumにEnterobacter aerogenesを加え15℃で維持した。Tetrahymena thermophilaと株化した繊毛虫を各々E. coli DH5α,L. pneumophila JR32およびJR32 Δdot/icmとMOI10000,22℃で共培養し2時間,1日,2日,7日,25日後にキーエンスオールインワン顕微鏡で観察した。
【結果・考察】Tetrahymena属4種,Uronema属1種がシリンジデバイスで分離された。共培養実験ではいずれの繊毛虫も細胞内にペレットを形成した。L. pneumophilaと比べてE. coliは取り込みが少ない様子が観察されたが,L. pneumophila JR32とΔdot/icmに違いは見られなかった。Uronema nigricansTetrahymena属に比べて早期にペレットを排出する様子が観察された。以上よりシリンジ分離法が繊毛虫分離に有用であること,繊毛虫種によりレジオネラ貪食の様子が異なることが示唆される。また現在qPCRを用いて菌数の変化を調べている。