[ODP-043] Genomic diversity and dynamics of Stx phages in EHEC O26:H11
志賀毒素(Stx)は腸管出血性大腸菌(EHEC)の主要病原因子のひとつであり,Stx1とStx2に分けられる。Stxはファージ(Stxファージ)にコードされ,Stxファージには著しいゲノム多様性が存在する。これまでに当研究室では,EHEC主要血清型のO26:H11(以下,O26)の大規模な系統解析を行った。その結果,ST(Sequence type)29 系統のO26から出現したST21 系統において,その共通祖先が獲得したstx1が安定に保持されていること,stx2陽性株はST29の各系統とST21の様々な亜系統に分布していることを明らかにした。しかし,O26におけるStxファージのゲノム多様性の実態は不明であるため,本研究では,その解明を目指した。まず,研究室保存41株と公共データベースの26株(計67 株:stx1陽性9株,stx2陽性32株,stx1/stx2陽性26株)のO26を用いて,全ゲノム配列に基づいた系統解析を行ない,さらに研究室保存株については,ロングPCRまたはMinIONを用いたロングリードシーケンスにより,Stxファージの挿入部位を決定した。Stx1ファージの挿入部位は,ST21の主要2系統間で異なっており(torS-torTとwrbA),ST21内でStx1ファージの脱落と再獲得が起きたことが示唆された。Stx2ファージの挿入部位は4か所特定されたが(argW, wrbA, yecE,プロファージゲノム領域内),ST29では各系統によって挿入部位が異なり,ST21では亜系統あるいは菌株依存的なStx2ファージの挿入が確認され,O26には多様なStx2ファージが存在することが示唆された。現在,Stxファージのダイナミクスの詳細とStx産生能への影響を明らかにするために,ファージゲノムの比較解析を行うとともに,stx2陽性株のStx2産生量を調べている。