第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4A] a. ゲノム・プラスミド・遺伝子水平伝播・可動性遺伝因子・進化

[ODP-046] Genome analysis of “Candidatus Rickettsia longicornii” revealed unique mobile genetic elements

○笠間 健太郎1,後藤 恭宏1,藤田 博己2,山本 正悟3,小椋 義俊4,安藤 秀二5,林 哲也1 (1九州大・医・細菌,2馬原アカリ医研,3(前)宮崎県衛環境研,4久留米大・医・感染医,5感染研)

Candidatus Rickettsia longicornii” (Rlon) は,日本に広く分布する両性生殖系のフタトゲチマダニから高頻度で分離されるリケッチアである。本菌種はヒトには非病原性であると考えられているが,系統解析によって,紅斑熱群リケッチア症の原因菌であるRickettsia japonicaRickettsia heilongjiangensisに極めて近いリケッチアであることが明らかとなっている。本研究では,Rlonの完全長ゲノム配列を決定し,近縁のリケッチア種との比較解析を行うことで,Rlonに特異的なICE (RAGE_Lo) 及びプラスミド(pRlo)を見出した。RAGE_Lo上には,他のリケッチア種のICEにもコードされている接合伝達関連遺伝子群が保存されていた一方で,RAGE_Loに特異的なT1SSが見出された。分泌タンパクと考えられる遺伝子産物は,ボルバキアの細胞質不和合性因子CifA/Bと類似した興味深い配列を示した。pRloにも接合伝達関連遺伝子群がコードされていたが,複数の遺伝子が偽遺伝子化しており,接合伝達能は失われていると思われる。しかし,pRloには宿主相互作用および代謝に関連する遺伝子群がコードされており,CifA/B類似タンパク質とともに,宿主マダニとの共生に寄与している可能性がある。