[ODP-051] Genome analysis of hard tick-borne relapsing fever borreliae
マダニなどの節足動物によって媒介されるボレリア属細菌は,ライム病あるいは回帰熱をヒトに引き起こす人獣共通感染症病原体であり,遺伝系統学的に3群に分けられる。このうち回帰熱群ボレリアは回帰性の熱発を主徴とする熱性疾患である回帰熱の起因菌である。回帰熱群ボレリアはその媒介節足動物の種類により,軟ダニ媒介性(STRF; 一部シラミ媒介性を含む)と硬ダニ媒介性(HTRF)に大別される。Borrelia miyamotoiは1995年に我が国ではじめて発見された硬ダニ媒介性回帰熱群ボレリアであり,2011年ロシアで新興回帰熱の起因菌として新たに同定された。その後米国,欧州,日本を含むアジア等で患者が報告されてきた。本菌は分離が非常に難しいことから,これまで数種のみでしかゲノム解析が行われておらず,遺伝学的な背景には不明な点が多い。本研究では遺伝学的な背景を調べるためBorrelia miyamotoi 15株(北海道分離株9株,本州分離株3株,モンゴル分離株3株)及び近縁種であるBorrelia sp. tHM16w 1株の計16株のHTRFボレリアについて次世代シーケンスによる解析を行い,染色体のゲノム配列を決定した。これら解読配列に公開済みの染色体配列を加え,コア遺伝子を用いた系統解析を行った。その結果,HTRFボレリアとSTRFボレリアは,回帰熱群ボレリアの祖先から分岐しており,ボレリアの祖先が硬ダニ媒介性であり,STRFボレリアの祖先が軟ダニに適応進化したと推定された。染色体の一塩基多型解析およびANI解析の結果,地理的な隔離よりも媒介マダニ種の違いがボレリアの遺伝学的な進化に強く影響を与えていることが示唆された。