第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4B] b. 遺伝子発現制御

[ODP-054] T9SS CTD タンパク質の一つであるPorAはT9SS構成タンパク質の遺伝子発現調節に関わる

○雪竹 英治1,庄子 幹郎1,佐藤 啓子1,反田 祐介2,内藤 真理子1,今田 勝巳2,中山 浩次1 (1長崎大・院医歯薬・口腔病原微生物学分野,2大阪大・院理・高分子科学)

歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisは,ジンジパインプロテアーゼを含む多くの病原因子を9型分泌機構(T9SS)により菌体表面に分泌する。T9SS構成タンパク質の発現は,二成分制御系PorXYとECFシグマ因子SigPによって直列的に調節されている。しかしながら,この調節経路の詳細は未だ不明なことが多い。我々は,T9SS CTDタンパク質の一つであるPGN_0123(PorAと命名)がT9SS構成タンパク質をコードする遺伝子の発現調節に関与していることを見出していた。今回,PorAについて以下の新たな知見を得た。1)porA欠失変異株からの表現型復帰株では,センサーキナーゼPorYの細胞質ドメイン領域にアミノ酸置換を引き起こす変異が存在した。2)porA欠失変異株ではPorY及びSigPタンパク質の量が顕著に減少した。3)PorAはT9SS分泌機構欠損株でも菌体表面に分泌され,その分子はシグナルを伝えることができた。4)PorAはT9SS のシャトルタンパク質PorVと結合した。5)X線結晶構造解析より,PorAは大腸菌1型線毛の先端タンパク質FimHのマンノース結合ドメインに類似していることがわかった。これらの結果から,PorAはPorXY-SigPシグナル伝達経路を活性化する菌体表面レセプターであると示唆される。