第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4B] b. 遺伝子発現制御

[ODP-055] バクテリアの形態形成に必須なRodZによる転写後調節(2)

○三戸部 治郎,米澤 英雄,花輪 智子, 大崎 敬子 (杏林大・医・感染症)

【目的】RodZはバクテリア細胞骨格蛋白として知られるMreBとともに,桿菌の桿状形態を形成する内膜蛋白である。我々は赤痢菌の3型分泌装置のレギュレーターInvE (VirB) を転写後レベルで調節する因子としてこれを同定し,RNA結合活性を持つことを報告した。病原性以外の表現型を調べたところ,赤痢菌のrodZ欠損株は過酸化水素の分解が亢進し,発現が抑えられる対数増殖期にRpoS (KatF) の発現が起こることが分かった。今回はrpoS以外の遺伝子群を調べた。
【方法・結果】種々のシグマ因子に対する抗体を用いて対数増殖後期の大腸菌K-12株を比較したところ,対数期シグマ因子のRpoDが同じ発現量である一方,RpoSと同様にrodZ欠損株でRpoHとRpoEの発現が増加しており,逆に鞭毛系のRpoF (FliA) の発現が低下していることが示された。またHfqで制御されることが知られるsstT遺伝子の発現をFLAG-tagを利用して調べたところ,前者と同様にrodZ欠損株で増加することが示された。
【考察】RpoHとRpoEのmRNAは5'側で二次構造をとり転写後制御されることが予想されている。これらのmRNAのリアルタイムPCRは野生型と欠損株で転写量に有意差が認められず,転写後レベルで発現がコントロールされている可能性が示唆された。一方で文献的にはrpoHのプロモーターはRpoDとRpoSの両方で制御されることが知られており,高発現しているRpoSの影響を確認する必要があると考えられた。