[ODP-058] 志賀毒素転換ファージにコードされる低分子RNAの機能解析
志賀毒素は腸管出血性大腸菌(EHEC)の重要な病原性因子の1つであり,免疫学的に異なるStx1とStx2がある。志賀毒素遺伝子(stx1,stx2)はラムダ様ファージゲノムにコードされており,この志賀毒素転換ファージが他の大腸菌に感染することで志賀毒素遺伝子は水平伝播する。近年,EHEC O157:H7 Sakai株に溶原化しているstx1,及びstx2をコードするファージ(Stx1ファージ,Stx2ファージ)の両方に低分子RNA 遺伝子stxSが存在することが報告された。我々はEHEC,及びStx2ファージを非病原性大腸菌に溶原化させた溶原菌における低分子RNA StxSの機能解析を行なった。
プラスミドからStxSを過剰産生させたEHECでは運動性の低下とべん毛の主要な構成タンパク質であるフラジェリン量の減少が見られ,さらにEHECの病原性に重要な3型分泌装置を構成するタンパク質量も減少した。一方で,stxS欠失株では顕著な表現型は見られなかった。次にStx2ファージ溶原菌を用いてStxSの機能解析を行なった。Stx2はStx2ファージの溶菌サイクルへの移行に伴って産生量が上昇し,溶菌時に細胞外へ放出される。そのため,DNA損傷剤添加より溶菌を誘導した際のStx2ファージとStx2の放出量を,stxS欠失溶原菌を用いて解析した。その結果,stxSの欠失によりDNA損傷剤添加後4時間におけるStx2ファージとStx2の放出量が約5倍に上昇し,この表現型はstxSを運ぶプラスミドで相補された。一方,DNA損傷剤添加後24時間においてはstxS欠失の影響は見られなかった。これらの結果は,stxS欠失株では溶菌のタイミングが早くなっていること,StxSは溶菌を抑制する機能があることを示唆する。現在,StxSが制御する遺伝子の同定を試みている。
プラスミドからStxSを過剰産生させたEHECでは運動性の低下とべん毛の主要な構成タンパク質であるフラジェリン量の減少が見られ,さらにEHECの病原性に重要な3型分泌装置を構成するタンパク質量も減少した。一方で,stxS欠失株では顕著な表現型は見られなかった。次にStx2ファージ溶原菌を用いてStxSの機能解析を行なった。Stx2はStx2ファージの溶菌サイクルへの移行に伴って産生量が上昇し,溶菌時に細胞外へ放出される。そのため,DNA損傷剤添加より溶菌を誘導した際のStx2ファージとStx2の放出量を,stxS欠失溶原菌を用いて解析した。その結果,stxSの欠失によりDNA損傷剤添加後4時間におけるStx2ファージとStx2の放出量が約5倍に上昇し,この表現型はstxSを運ぶプラスミドで相補された。一方,DNA損傷剤添加後24時間においてはstxS欠失の影響は見られなかった。これらの結果は,stxS欠失株では溶菌のタイミングが早くなっていること,StxSは溶菌を抑制する機能があることを示唆する。現在,StxSが制御する遺伝子の同定を試みている。