第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4C] c. タンパク質の構造と機能

[ODP-061] 歯周病細菌の9型分泌機構により分泌されるタンパク質の新規糖鎖結合機構

○庄子 幹郎1,Paul D. Veith2,中山 浩次1,Eric C. Reynolds2,内藤 真理子1 (1長崎大学・院医歯薬・口腔病原微生物学分野,2メルボルン大学・歯・オーラルヘルス共同センター)

歯周病細菌Porphyromonas gingivalis(Pg)は9型分泌機構(T9SS)によりジンジパインプロテーゼなどの病原タンパク質(T9SS分泌タンパク質)を分泌する。T9SS分泌タンパク質の多くは菌体表面でA-LPSと呼ばれるある種のリポ多糖に共有結合する。我々はA-LPSの糖鎖の生合成に関わる遺伝子を同定し,糖鎖に関わる糖の一つが緑膿菌に存在する構成糖の生合成系(Wbp経路)と類似な系で合成されることを報告した(Shoji et al. 2014)。T9SS分泌タンパク質はC末端領域(CTD)に共通性があり,その多くはPorUプロテアーゼによりCTDが切断・除去された後,C末端側がA-LPSに共有結合すると推測された。今回,A-LPS結合型T9SS分泌タンパク質について,糖鎖をある程度除去した後,質量分析法によりC末端アミノ酸領域に付加している糖の同定を試みた。その結果,T9SS分泌タンパク質はC末端側にセリン-ジアミノグルクロナミドの付加を認めた。一方,T9SSを有する類縁菌のTannerella forsythia(Tf)ではグリシン-ジアミノグルクロン酸の付加を認めた。また,Pgにおけるジアミノグルクロナミド合成にはPGN_1234(WbpSと命名)が関わること,これらの付加物においてPgではA-LPS糖鎖合成に関わるVimAタンパク質はセリン,TfのVimAはグリシンの付加に寄与することも示唆された。これらの結果から,糖鎖結合型T9SS分泌タンパク質には新たな合成経路(Wbp/Vim経路)により合成される糖とアミノ酸が結合していることが示唆された。