第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4C] c. タンパク質の構造と機能

[ODP-062/WS6-4] 大腸菌のバイオフィルム形成と高温適応におけるJDPの機能的ヒエラルキー

○杉本 真也1,山中 邦俊2,丹羽 達也3,寺澤 友梨香1,水之江 義充1,小椋 光2,金城 雄樹1 (1慈恵医大・細菌学,2熊本大・発生研,3東京工業大・細胞制御工学研究センター)

Hsp70は,J-domain protein(JDP)と共同的に基質タンパク質のフォールディングを介添えする分子シャペロンである。大腸菌にはDnaKを含む3種類のHsp70ホモログと6つのJDPが同定されている。主に細胞質に局在するDnaJとCbpA,および内膜に局在するDjlAという3つのJDPはDnaKと協調的に機能するが,それらの使い分けはよく分かっていない。本研究では,バイオフィルム形成に重要な役割を果たす菌体外アミロイド線維Curliの産生と高温感受性を指標にして,これら3つのJDPの重要性を探った。
大腸菌BW25113株を親株として種々のJDP遺伝子欠損株を作製し,Curliの産生を調べた。その結果,JDP単独遺伝子欠損株は親株と同様にCurliを産生したが,cbpA dnaJ二重欠損株はCurliを産生しなかった。また,cbpA dnaJ二重欠損株のCurliの産生はプラスミドからDnaJまたはCbpAを発現することで回復したが,DjlAや膜貫通ドメインを欠損したDjlAΔTMの発現では回復しなかった。次に,高温感受性を調べた結果,cbpAおよびdjlAの単独遺伝子欠損株は親株と同様に生育したが,dnaJ欠損株では43℃での生育が著しく低下した。さらに,cbpA dnaJ二重欠損株では,dnaJ欠損株よりも43℃での生育が低下した。cbpA dnaJ二重欠損株の43℃での生育は,プラスミドから少量のDnaJを発現することで回復したが,CbpAおよびDjlAΔTMを親株と同レベル発現させた場合には回復しなかった。一方,過剰量のCbpAをプラスミドから発現させたところ,cbpA dnaJ二重欠損株の43℃での生育が回復したが,DjlAΔTMの過剰発現では部分的に生育が回復した。以上の結果をもとに,3つのJDPの機能的ヒエラルキーについて議論したい。