第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4E] e. 情報伝達(菌体内・菌細胞間)

[ODP-070] 密度勾配超遠心法とフローサイトメトリーを併用したグラム陽性細菌が産生する膜小胞試料の調製法の検討

○那須川 忠弥1,杉本 良輔1,内山 淳平1,内山 伊代1,村上 裕信1,福田 憲2,松崎 茂展2,阪口 雅弘1 (1麻布大・獣医,2高知大・医)

【目的】細菌が放出する10-200 nmの脂質構造物である膜小胞(MV)は,細菌のタンパク質や核酸などの担体として機能し,多くの生理学的機能を有することが知られている。グラム陽性菌のMVの精製には,Iodixanol密度勾配超遠心法(IDGUC)が利用されている。ソーティング機能を有する高性能フローサイトメトリー(FACS)は,さらに高品質なMVの調製を可能にすることが期待される。本研究ではIDGUCとFACSを併用した高品質なグラム陽性菌MV試料の調製法の検討を行った。
【方法】Staphylococcus aureus SA27株とBacillus subtilis 168株を使用した。ソーティング前後の試料で,FACSによるMV純度の解析,SDS-PAGEを利用したMV含有タンパク質の解析,MVの透過型電子顕微鏡による粒子観察を行った。
【結果と考察】標準ビーズを使用し,FACS解析のためのMV領域を決定した。ソーティング前後のMVの品質の比較を行った。FACSによるMVの純度解析の結果,ソーティングによりMVの純度が約4倍に向上した。次に,MV含有タンパク質の解析の結果,ソーティング後の試料では過剰なタンパク質が除去されていた。最後に,MV粒子観察の結果,ソーティングにより均一な粒径のMVを分離できることが明らかとなった。
以上から,本調製法では,純度・均一性の高い高品質なMVを取得できることが示唆された。本調製法は,プロテオミクス解析やメタゲノム解析など高品質な試料が必要な解析への応用が期待される。