[ODP-073] Quorum-sennsing-mediated heterogeneity in Clostridium perfringens biofilm
ウェルシュ菌はガス壊疽や食中毒の原因菌であり,毒素生産をクオラムセンシング(QS)によって制御する。また本菌はバイオフィルム(BF)形成能を有しており,本菌の細胞外マトリクス(EPS)生産は25°C で上昇し,37°C と比較してBF形態を変化させる(Obana et al., 2014, J. Bacteriol.)。このBF形態変化は宿主内外環境の適応戦略と予想されるため,本菌の病原性発現にQSとBF形成は共に重要な役割を担うことが予想される。しかし,両者の関連には不明な点が多い。そこで我々は,BF形態変化に関与するEPS生産遺伝子群(sipWオペロン)のプロモーターレポーター株を用いて,両者の関連性を1細胞レベルで解析した。野生株では,sipWプロモーター(PsipW)は二峰性の不均一な発現分布を示し,PsipW-ON細胞数は温度の上昇に伴い減少する(Obana et al., 2020, NPJ Biofilms Microbiomes.)。一方で,QSシグナル生産遺伝子agrBDの欠損株は,温度に関わらずPsipWが全菌で発現する均一な分布を示し,温度によるBF形態変化能が失われた。さらに,QSシグナルの外部添加及び野生株との共培養によって,agrBD欠損株のPsipW二峰性発現は回復した。これらの結果から,QSシグナルの細胞間伝達がsipWオペロンの二峰性発現を制御し,EPS生産の不均一性とBFの形態変化を調節することが示唆された。また,本菌のQSシグナルによる毒素遺伝子発現制御には,VirR/VirS二成分制御系が関与することが知られている。しかし,virRS欠損株のPsipW発現は二峰性を保っていた。つまりQSシグナルは,VirR/VirS二成分制御系を介さない新規経路を介して,sipWオペロンの発現の不均一性を制御することが示唆された。