第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4F] f. 微生物の代謝

[ODP-080] 細菌におけるアミノアシル-tRNA合成酵素による活性硫黄生合成機構の発見

○井田 智章1,Minkyung Jung1,松永 哲郎1,西村 明2,守田 匡伸1,髙田 剛1,本橋 ほづみ3,赤池 孝章1 (1東北大学・院医・環境医学,2奈良先端大学・ストレス微生物科学,3東北大学・加齢医学・遺伝子発現制御)

【目的】我々はこれまで,強力な求核性を有するシステインパースルフィド(CysSSH)などの活性硫黄分子の生体内生成を見出し,主要なCysSSH生成系としてcysteinyl-tRNA synthetase (CARS) を同定した。一方,CysSSH生合成系の全貌は明らかではない。そこで本研究では,細菌におけるCysSSH合成機構について解析した。
【方法・結果】組換え大腸菌CARSを用いた硫黄代謝解析により,CARSに種横断的に高度に保存されたアミノ酸配列(KIIKモチーフ)とその周辺アミノ酸配列を同定した。さらに,CARSはシステインを基質にした酵素反応において光学異性体特異性はなく,さらに基質としてもシステイン以外のチオール含有化合物からパースルフィドを合成することが示された。一方,CARS以外の19種のアミノアシル-tRNA合成酵素のCysSSH合成活性を検討した結果,CARS以外でもleucyl-tRNA合成酵素(LARS)など各種アミノアシル-tRNA合成酵素がCysSSHを産生した。
【考察】本研究成果を契機に,CARSやLARSなど各種アミノアシル-tRNA合成酵素が,アミノアシル化反応によるタンパク質合成だけでなく,活性硫黄分子の主要な生成系として生体内におけるエネルギー代謝をはじめ多彩な生理活性を発揮していることが内外に広く認知されつつある。