第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

4 微生物の分子論

[ODP4G] g. 各種オミクス・バイオインフォマティクス

[ODP-083] 菌血症における病原菌の患者内多様性解明に向けた解析パイプライン

○園田 大輝1,後藤 恭宏2,西田 留梨子2,3,下野 信行4,中村 佳司2,林 哲也2 (1九州大・医・生命,2九州大院・医・細菌学,3九州大病院・検査部,4九州大病院・グローバル感染症センター)

菌血症の診断は,血液培養により得られた単一コロニーを用いた菌種同定等によって行われるが,患者内に存在する原因菌は必ずしも単一クローンではなく,何らかの遺伝的多様性が存在し,治療や宿主免疫等によって更に変化する可能性がある。本研究では,菌血症患者内に存在する原因菌の遺伝的多様性を解析することを目的として,集団遺伝学的視点とメタゲノム解析を組み合わせた解析パイプラインの構築を目指した。まず,九州大学病院検査部で実施された血液培養で陽性となった検体を収集し,その中で1) 確実に感染症と診断,2) 臨床検査で単一菌種が分離,3) コンタミネーションが否定,の3条件を満たした検体から42検体を選んで解析手法の検討を行った。DNA精製は,細菌由来の配列の効率的に取得するため,ヒト細胞の混入を避け,細菌DNAをエンリッチする手法を考案した。また,ライブラリ調製にはシーケンスバイアスの少ないNEBNext Ultra II FS DNA Library Prep for Illumina(NEB社)を選択し,イルミナシーケンサで150 bpのペアエンド配列を取得した後,ヒトゲノム配列を除去して確実に細菌由来と考えられるリード配列のみを使用することとした。さらに,platanus_Bプログラムを用いて構築した参照ゲノム配列(多型が存在する場合には多数決によるコンセンサス配列)へのリードマッピングによってヘテロサイトを検出し,一塩基多型(SNP)や塩基の挿入/欠失(InDel)を特定することとした。現在,ヘテロサイトと誤検出される領域をフィルタリングするプロセスの検討を行っている。本発表では,構築したパイプラインと実際に検出されたヘテロサイトについて紹介する。