[ODP-088] 小児重症例から分離された腸管出血性大腸菌新規血清群OX18および関連株のゲノム解析
尿路感染症から続発した溶血性尿毒症症候群(HUS)の症例から,既存の抗血清では型別できない腸管出血性大腸菌(EHEC)が分離された。MiSeq(Illumina)を用いて全ゲノム配列を解析してO抗原決定領域を調べたところ,同菌株は新規血清群OX18であることが明らかとなった。そこで,OX18のO群決定遺伝子のPCR検出系を確立し,2007年以降に分離されたO群型別不能EHECの型別を行った結果,新たに25株のEHEC OX18が検出された。前述のHUS由来株を含めた計26株の全ゲノム解析を解読し,コアゲノムSNPによる系統解析および保有病原性因子の解析等を行ったところ,有症者から分離されたOX18はH型(H2,H19,H34)毎に3種の系統へ分類された。HUS由来のOX18:H2およびOX18:H19株は,いずれも3型蛋白質輸送装置をコードするLEE遺伝子群を保有せず,STEC agglutinating adhesin(Saa)遺伝子やサチラーゼ毒素(Sub)遺伝子を保有し,重症例由来LEE非保有のEHECに特徴的な類似した病原性遺伝子プロファイルを示した。一方,OX18:H34はH2およびH19とは系統が大きく異なり,細胞への接着因子としてはPap線毛をコードしていた。EHEC OX18は,散発的にではあるが,近年継続的に重症例から分離されており,Og型別等によって発生動向を注視する必要がある。
【発表者所属】宇田和宏(都立小児総合医療センター・感染症科),松村 壮史(神奈川県立こども医療センター・腎臓内科),石倉健司(北里大学医学部小児科学)
【発表者所属】宇田和宏(都立小児総合医療センター・感染症科),松村 壮史(神奈川県立こども医療センター・腎臓内科),石倉健司(北里大学医学部小児科学)