第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

5 病原体と感染症(疫学を含む)

[ODP5B] b. 臨床微生物の検出・同定技術

[ODP-095] 細菌検査を自動化する−レプトスピラ症の顕微鏡下凝集試験(Microscopic Agglutination Test; MAT)を例に

○尾鶴 亮1,小山田 雄仁2,増澤 俊之3,宮原 敏4,二階堂 靖彦4,齋藤 光正4,Sharon Y. A. M. Villanueva5,藤井 潤1 (1鳥取大・医・細菌,2鳥取大・工・電気情報,3千葉科学大・薬・免疫微生物,4産業医大・医・微生物,5フィリピン大マニラ校・公衆衛生・微生物)

新型コロナウイルス感染症の勃興により,これまで以上に「安全」かつ「確実」な微生物学的検査が求められている。これらを実現する一つの方向性が,AI(人工知能)やロボットを用いた検査の自動化である。本発表ではその一例として,レプトスピラ症の標準的検査法である顕微鏡下凝集試験(MAT)の機械学習による自動化を紹介する。MATは希釈した患者血清とレプトスピラ生菌を混合し,凝集の有無を暗視野顕微鏡下で判定して抗体価を算出する手法である。しかし1検体あたり数十標本の鏡検が必要で効率化が望まれている。また判定は,凝集していないフリーの菌数が50%以下になった場合を「凝集陽性」とするが,菌体と血清中の夾雑物を正確に識別しながら目視で判定するには習熟が必要で,標準化が難しいのが現状である。本研究では,レプトスピラ(Leptospira interrogans)感染(陽性)・非感染(陰性)ハムスターの血清を用いMATを行って顕微鏡画像(陽性526枚,陰性384枚)を取得した。全画像のうち6:4の割合で学習:検証に用いた。取得した元画像に加え,画像をウェーブレット変換(WT)したものも特徴量とした。判定手法はサポートベクターマシン(SVM)を利用した。学習後のSVMに対し,陽性画像210枚,陰性画像154枚を用いた検証を行った。特徴量が元画像やWT後の画像データの場合,陰性画像を全て陽性と誤判断し(偽陽性),感度1,特異度0と分類性能は極めて低かった。これに対し,WT後のウェーブレット係数ヒストグラムを特徴量とすると,感度0.99,特異度0.99と分類性能の大幅な改善が見られた。本発表ではソフト面(機械学習)の結果に加え,ハード面(機械化)の構想についても紹介する。