第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

5 病原体と感染症(疫学を含む)

[ODP5D] d. 疫学・分子疫学

[ODP-108] VanA型バンコマイシン耐性遺伝子群保有線状プラスミドによるVRE院内感染事例の解析

○橋本 佑輔1,鈴木 仁人3,野村 隆浩1,久留島 潤1,平川 秀忠1,谷本 弘一2,富田 治芳1,2 (1群馬大・院医・細菌学,2群馬大・院医・薬剤耐性菌実験施設,3国立感染症研究所 薬剤耐性研究センター)

【緒言】国内ではバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の分離頻度は低いものの,散発的なアウトブレイクは毎年報告されている。院内感染事例において,患者間の水平伝播と共に腸球菌間におけるプラスミドの水平伝播がバンコマイシン(VAN)耐性遺伝子群の拡散に重要な役割を果たしているとされる。今回,VanA型耐性遺伝子群を保有した線状プラスミドによるVRE院内感染事例の解析を行ったので報告する。
【対象・方法】国内単一医療機関にて分離・同定されたVRE25株(E. faecium 14株,E. raffinosus 8株,E. casseliflavus 3株)の解析を実施した。これらの株はVAN MIC値256mg/L以上を示す高度耐性株であった。PFGE・Southern blot解析から,22株がほぼ同一サイズの線状構造をしたプラスミドを保有し,この線状プラスミド上にVanA型耐性遺伝子群が存在することが確認された。代表株1株(KUHS13株)に関して次世代シーケンス解析を実施したところ,本プラスミド(pELF2)は108,102 bpのサイズであり,以前に報告したpELF1に極めて類似した構造をしていた。臨床情報を基に疫学解析を実施したところ,患者間におけるVREの水平伝播と共に,患者の体内において異なる腸球菌種へ線状プラスミドの水平伝播が起きていたことが示唆された。

【考察】複数の腸球菌種への接合伝達能を有するVanA型耐性遺伝子群保有線状プラスミドによる院内感染事例について解析した。Non-faecium・faecalisは感染症起因菌となることは少ないものの,耐性遺伝子の重要なリザーバーとの報告もあり,本研究結果は臨床上も重要な知見であると考えられた。