第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6A] a. 接着因子・定着因子

[ODP-116] Aggregatibacter actinomycetemcomitansは血清培養時に共凝集性を促進する

○大貝 悠一1,藤田 愛弓2,中田 匡宣1,小松澤 均3 (1鹿児島大院・医歯学・口腔微生物,2鹿児島大院・医歯学・歯周病学,3広島大院・医系科学・細菌学)

Aggregatibacter actinomycetemcomitans (Aa) は歯周病,とりわけ侵襲性歯周炎,の発症に深く関与する病原性細菌である。歯周組織における細菌の定着に重要な要素として,他の口腔細菌間の共凝集が挙げられる。共凝集に中心的な役割を担うFusobacterium nucleatum (Fn) は一部のAa株と共凝集する。本研究では,各種培養条件で生育させた複数のAa株を用いFn ATCC25586株との共凝集性を解析した。供試したAa菌株のうち,Aa HK1651株は強い共凝集性を示した。より生体内に近い条件として50%血清(仔牛の非働化血清)を培地に添加した結果,共凝集が著しく認められた。一部のAa株はリポ多糖のO-多糖部位を介してFnと共凝集することが示唆されているため,共凝集反応系にO-多糖関連の糖を添加した。その結果,d-(+)-ガラクトースおよびl-(+)-ラムノースの添加はAaとFnの共凝集を抑制した。一方,Aaを血清含有培地で培養した場合,これらの糖による共凝集の抑制は限定的であった。したがって,O-多糖とは異なる因子が血清存在下での共凝集促進に関与することが示唆された。また,血清含有培地と通常培地で培養したAaのトランスクリプトームを解析により,血清含有条件下での鉄獲得因子群と一部のシグマ因子の発現上昇が明らかになった。以上の結果から,血清成分に晒される生体内環境において,Aaは特定遺伝子群の発現を変動させ,Fnとの共凝集性と定着性を増強することが示唆された。