[ODP-118] 黄色ブドウ球菌のバイオフィルムにおける細胞外RNAの性状
黄色ブドウ球菌は高いバイオフィルム形成能を有するため,血管内留置カテーテルなどにバイオフィルムを形成し,難治性感染症の原因となる。その予防・治療法の開発には,バイオフィルム形成の分子基盤の理解が重要である。これまでに我々は,慈恵医大病院の臨床検体から分離されたMRSAのMR10株を用いて,細胞外RNA(eRNA)がバイオフィルム形成に重要な役割を果たすことを見出した。本研究では,eRNAの性状について解析した。
MR10株の多糖産生量が多いことに注目し,多糖とeRNAの関係について,共焦点レーザー顕微鏡による局在観察と表面プラズモン共鳴法による相互作用解析を行った。その結果,eRNAと細胞外多糖はバイオフィルム内で共局在し,直接結合することが分かった。次に,MR10株の細胞外マトリクスにはeRNAが安定的に存在することから,細胞外核酸分解活性を調べたところ,MR10株には活性が認められなかった。また,MR10株は黄色ブドウ球菌の細胞外DNase/RNase活性を規定する遺伝子のnucAが完全に欠損していることがわかった。そこで,黄色ブドウ球菌Newman株のnucAをプラスミドに連結し,MR10株に導入したところ,バイオフィルム形成が阻害された。また,血管内カテーテルを模したin vitroバイオフィルムモデルで,ヒト血液から精製したRNAによりMR10株のバイオフィルム形成量が増加することを見出した。
以上より,バイオフィルム内でのeRNAの保持には多糖の産生だけでなく核酸分解酵素の欠損も重要であること,血管内留置カテーテルなどへのバイオフィルムの形成において外部のRNAを利用することでより強固なバイオフィルムが作られる可能性が示唆された。
MR10株の多糖産生量が多いことに注目し,多糖とeRNAの関係について,共焦点レーザー顕微鏡による局在観察と表面プラズモン共鳴法による相互作用解析を行った。その結果,eRNAと細胞外多糖はバイオフィルム内で共局在し,直接結合することが分かった。次に,MR10株の細胞外マトリクスにはeRNAが安定的に存在することから,細胞外核酸分解活性を調べたところ,MR10株には活性が認められなかった。また,MR10株は黄色ブドウ球菌の細胞外DNase/RNase活性を規定する遺伝子のnucAが完全に欠損していることがわかった。そこで,黄色ブドウ球菌Newman株のnucAをプラスミドに連結し,MR10株に導入したところ,バイオフィルム形成が阻害された。また,血管内カテーテルを模したin vitroバイオフィルムモデルで,ヒト血液から精製したRNAによりMR10株のバイオフィルム形成量が増加することを見出した。
以上より,バイオフィルム内でのeRNAの保持には多糖の産生だけでなく核酸分解酵素の欠損も重要であること,血管内留置カテーテルなどへのバイオフィルムの形成において外部のRNAを利用することでより強固なバイオフィルムが作られる可能性が示唆された。