第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-123] ボツリヌス菌C2毒素の細胞内への取り込みはプロテアーゼ活性を必要とする

○小林 敬子,岡 杏奈,竹原 正也,永浜 政博 (徳島文理大・薬・微生物)

【目的】C型ボツリヌス菌のC2毒素は,細胞内侵入時にCa2+流入によりリソソームのエキソサイトーシスが促進され,酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASMase)が遊離しエンドサイトーシスが開始し細胞内に侵入する。今回,C2毒素の細胞内侵入を明らかにするため,本毒素侵入時に遊離するリソソーム内のプロテアーゼの役割について検討した。
【方法と結果】C2毒素の侵入にリソソームから遊離するプロテアーゼが関与するかどうかを検討すると,プロテアーゼ阻害剤カクテル(PIカクテル),システインプロテアーゼ阻害剤E-64はC2毒素のラウンディング活性を抑制した。次にC2毒素処理により細胞外に遊離するプロテアーゼを蛍光基質分解活性で測定すると,C2毒素の処理濃度に依存して培地中のカテプシンBとLの活性が上昇した。この本毒素によるカテプシン活性の上昇は,PIカクテルとE-64により抑制された。さらに,C2毒素処理した細胞内のカテプシン量を測定すると,細胞内のカテプシンBとLの減少が認められた。次に,C2毒素の細胞内侵入を蛍光抗体法で観察すると,プロテアーゼ阻害剤未処理の細胞では細胞内に毒素の侵入が認められたが,細胞毒性を抑制したPIカクテルとE-64処理では本毒素の侵入が抑制された。
【考察】C2毒素は細胞膜上でオリゴマーを形成し,細胞内にCa2+を流入させリソソームのエキソサイトーシスによりASMase遊離を誘導する。細胞外に遊離したASMaseはカテプシンBとLで活性化され,その結果,ASMaseがSMを分解し,細胞膜上にセラミドが生成する。セラミドによる細胞膜の局所の陥入が起こり,本毒素がエンドサイトーシスにより,細胞内に侵入することが判明した。