[ODP-124] 深海微生物由来生理活性物質によるLPSに誘導される炎症反応の抑制
リポ多糖(LPS,内毒素)はグラム陰性菌外膜の構成成分であり,細胞表面のTLR-4に結合して,敗血症などの炎症疾患を誘発する。そこでLPSの活性を阻害する低分子化合物は抗炎症医薬として有用と考えられる。一方,近年は深海微生物の産生する生理活性物質が注目されている。そこで今回,深海微生物が産生するLPS誘導NO産生阻害物質を探索した。その結果,深海微生物から複数の新規および既知化合物が得られた。中でも,約2000 mの深海カビAspergillus sp.から単離された既知化合物,cyclopenolとcyclopeninは,いずれもbenzodiazepineの構造で,マウス単球性白血病細胞RAW264.7において,毒性のない濃度でLPSに誘導されるNOの産生を阻害した。さらに,両化合物はLPSに誘導されるIL-6の産生も阻害し,上流のNF-κB活性も阻害した。一方,アルツハイマー病発症機構のひとつとしてミクログリア細胞による炎症mediator産生が知られている。両物質はマウスミクログリア細胞においてLPSに誘導されるiNOS,IL-6,IL-1ß発現を阻害した。さらに,in vivoの活性評価として,ショウジョウバエの嗅覚と刺激学習効果を用いたアルツハイマー病モデルを用いた。amyloid-ß 42を高発現させたハエの学習低下モデルにおける改善効果を調べたところ,cyclopenolには効果がみられなかったが,cyclopeninは学習能力低下を改善した。以上のように,深海微生物はLPS活性阻害物質の探索に有用であることがわかった。