第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-133] Bartonella elizabethae由来血管新生因子の同定

○鈴木 菜つみ1,熊懐 香葉1,2,土井 洋平1,塚本 健太郎1 (1藤田医大・医・微生物,2藤田医大・院・医学研究科)

Bartonella属細菌はグラム陰性の通性細胞内寄生細菌でこれまで30菌種以上が同定されている。ヒトの病原菌としてはB. henselaeB. quintanaB. bacilliformsの3菌種が有名だが,他にもヒトに感染症を起こすものがある。その中でB. elizabethaeBe)は感染性心内膜炎の原因になることが知られていたが,2019年,B. henselaeB. quintanaと同様に細菌性血管腫を引き起こした症例が報告された。細菌性血管腫の病変部では顕著な血管増生が見られ,最近我々はこの病態形成に関わる重要な病原因子として菌から分泌される血管新生因子BafAを同定している(Nat Commun, 2020)。このことからBeもBafAを産生し血管新生を惹起すると予想されるが,本菌における血管新生作用を調べた報告は未だない。そこで本研究では,Be由来BafAの特定を試み,その血管内皮細胞に対する作用を調べた。
Beをヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に感染させたところ,感染細胞では細胞数の増加が認められた。次にBeを液体培地中で2日間培養し,その培養上清をHUVECに添加した結果,培養上清を加えた細胞で細胞増殖の促進が認められた。このことからBeは血管内皮細胞に作用する増殖因子を分泌することが示唆された。そこで,Beのゲノム配列中にbafA遺伝子が存在するかBLASTにて検索したところ,B. henselae由来bafAと52%の相同性を示すホモログが存在することがわかった。この遺伝子をクローニング後,大腸菌の組換えタンパク質として精製しHUVECに作用させた結果,細胞増殖促進活性が認められた。以上のことから,BeB. henselaeB. quintanaと同様にBafAを産生し,細菌性血管腫の病態形成に寄与すると考えられる。