[ODP-145] Vaginal Lactobacillus iners impacts on barrier functions of the human vaginal mucosa
ヒト成年期の膣内には乳酸桿菌(Lactobacillus)が最優勢菌として常在しており,主にL. crispatus, L. iners, L. gasseri, L. jensenii のいずれか一菌種により構成されると報告されている。乳酸桿菌は乳酸を産生することで病原微生物の排除に関与するなど,これまでその存在は有益と考えられてきた。しかしながら近年,L. inersのみ有益作用を保持する一方,子宮頸がん率や早産率を有意に高めるなど周産期疾患の原因となることが明らかにされた。本研究では,L. inersが女性生殖器粘膜バリア機構に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。ヒトの膣上皮細胞(VK2またはV19I)にL. inersまたは疾病予防作用が示唆されるL. crispatusの臨床分離株(HM-637, 638, 704, 708)を感染させ,24時間共培養した。ウェスタンブロティング及び蛍光免疫染色にて,細胞接着因子 E-cadherinの切断の有無を確認・比較した。その結果,L. iners 感染細胞でのみE-cadherinの切断が認められた。本活性は,L. inersより分泌される細胞溶解酵素inerolysinを用いても同様であった。よって,L. inersによるE-cadherin切断活性はinerolysinによることが明らかとなり,本酵素の分泌が粘膜バリア機構に影響を及ぼし,周産期疾患の原因となる可能性が考えられた。