第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6B] b. 毒素・エフェクター・生理活性物質

[ODP-147] Bartonella属細菌が有する血管内皮細胞増殖促進作用の菌種間差異

○熊懐 香葉1,2,土井 洋平1,塚本 健太郎1 (1藤田医大・医・微生物,2藤田医大・院・医学研究科)

Bartonella属細菌は様々な動物に自然感染しており,動物から直接あるいは節足動物を介してヒトに感染する。この感染成立のためには血管内皮細胞が菌の増殖ニッチとして重要だと考えられている。また,猫ひっかき病の原因となるB. henselaeには血管内皮細胞を増殖させる機構が備わっており,我々はこの機構に必須の因子としてオートトランスポーターであるBafAを同定した(Nat Commun, 2020)。BafAをコードする遺伝子は多くのBartonella属細菌に保存されているが,B. henselaeB. quintana以外の菌が持つBafAファミリータンパク質の生物活性は分かっていない。そこで本研究ではB. grahamiiB. doshiaeB. koehleraeの3菌種のヒト血管内皮細胞に対する作用と各菌に由来するBafAの活性について調べ,菌種間の差異について検討した。
B. koehleraeをヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)に感染させると細胞数が増加したが,B. grahamiiB. doshiaeの感染では細胞数が減少した。次に,各菌のBafAを大腸菌発現系で調製しHUVECに作用させたところ,B. koehleraeB. grahamiiのBafAには細胞増殖促進活性がみられた。一方,B. doshiaeのBafAにはこのような活性は認められず,菌種間でBafAの活性に違いがあることが明らかとなった。B. koehleraeで感染時に細胞増殖の促進がみられ,BafAにも活性が認められた点はB. henselaeのもつ性状に一致している。このことからB. koehleraeB. henselaeと同様にヒト血管内皮細胞に対する親和性が高いと考えられた。B. grahamiiB. doshiaeはHUVECに対する増殖促進能を示さなかったことから,ヒト細胞への適応性が低いことが示唆された。