[ODP-167] Effect of Helicobacter pylori infection on intestinal microbiota of MPS mice
Helicobacter pyloriはヒトの胃に感染し,除菌治療が施されない限り生涯にわたって持続感染している。感染の経過とともに,化生性の変化ならびに萎縮性胃炎の進展が進み胃酸分泌が減少し,胃のみならず小腸内細菌叢に影響を及ぼすことが示唆されている。本研究は,H. pylori長期持続感染マウスモデルを用いて,本菌の感染が腸内細菌叢に影響することを明らかにする目的で実施した。MPSマウスは,H. pyloriTK1402m4株(2-5 x 108 CFU)を2日間,連続経口投与した。感染期間終了後,胃,小腸,盲腸内容物のDNAを抽出し,細菌16SリボソームDNAのV3-V4領域を標的とするユニバーサルプライマーを用いて増幅し,次世代シーケンサーMiseq(イルミナ社)で解析した。QIIMEによるWeighted Unifrac距離に基づく,主座標分析(PCoA)と,α多様性の比較解析を行った。経口投与を行ったMPSマウスの全頭にH. pyloriの胃内感染を認め,感染5週後に平均104.7 CFU/g mucus,24週後には平均103.7 CFU/g mucusで維持されていた。マウスの盲腸内容物の腸内細菌叢解析を行った結果,PCoA結果で感染群と非感染群は別のクラスターにプロットされPERM ANOVA解析で有意な差を認めた(P<0.05)。占有比率の変化が有意な149のOTUが認められた。さらに門レベルの占有率の差を群ごとの平均値で比較してみると,Bacteroidetesの占有率が感染群で28.8%,非感染群で40.6%であり,Firmicutesの占有率が感染群で64.1%,非感染群で53.6%と有意な差が認められた(P<0.05)。以上の結果から,H. pylori感染マウスモデルにおいて,消化管細菌叢に対する影響は胃内にとどまらず,腸管の細菌叢にまで影響を及ぼすことが明らかとなった。