第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6E] e. 感染モデルを用いた基礎研究

[ODP-169] C型レクチン受容体Mincleはらい菌感染マウスの宿主防御機構に関与する

○河喜多 智美1,3,前田 百美1,山崎 晶2,梁 明秀3,阿戸 学1 (1国立感染症研究所・ハンセン病研究センター・感染制御部,2大阪大学・微生物病研究所・分子免疫制御分野,3横浜市立大学・大学院医学研究科・分子生体防御学)

Mycobacterium属細菌は外膜に特徴的な糖脂質構造を持ち,それらの一部はパターン認識受容体に認識され宿主の免疫応答を誘導する。パターン認識受容体の中でC型レクチン受容体の一つであるMincleは,結核菌の外膜糖脂質TDMを認識し自然免疫応答を誘導することが報告されているが,結核菌と同じMycobacterium属細菌でハンセン病の起因菌であるらい菌がMincleのリガンドを保有するかどうかまだ明らかになっていない。
らい菌は人工培地では増殖が成功していないが,免疫不全マウスの足蹠にて増殖させることが可能である。Mincleがらい菌の生体内での生存に関与するかを確かめるため,T細胞B細胞の成熟に必要なRag1遺伝子のノックアウトマウス(Rag-/-マウス)とRag1およびMincleのダブルノックアウトマウス(Rag-/-Mincle-/-マウス)の足蹠にらい菌を接種し,腫脹を経時的に計測するとともに,病理学的解析,及びサイトカインの発現解析を行った。
感染12ヶ月において,Rag-/-Mincle-/-マウスの足蹠はRag-/-マウスに比べて顕著な腫脹を示した。足蹠の腫脹と相関して,組織内の菌数はRag-/-Mincle-/-マウスで増大を認めた。また,この時点における感染足部mRNA量の比較をqRT-PCRで実施した結果,Rag-/-Mincle-/-マウスでRag-/-マウスと比較して,iNOSの発現が低い一方,IL-10の発現が高い傾向が確認された。これらの結果から,Mincleがらい菌に対する感染防御機構に関与している可能性が示された。