第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

6 病原因子と生体防御

[ODP6F] f. 免疫機構・ワクチン開発

[ODP-184] B型ボツリヌス毒素を中和するヒト型モノクローナル抗体の作用機序の解明

○北村 真悠,松村 拓大,阿松 翔,油谷 雅広,森本 ちよの,藤永 由佳子 (金沢大・医・細菌)

ボツリヌス症の原因となるボツリヌス神経毒素(BoNT)は,重鎖C末端(HC;結合ドメイン)を介して神経細胞へ結合し,小胞として細胞内へ取り込まれた後,軽鎖(LC;酵素活性ドメイン)が細胞質へtranslocationし,SNAREタンパク質を切断することで神経伝達物質の放出を阻害する。現在,本症の治療に用いられるウマ抗血清は,ヒトにとって異種タンパクであるため重篤なアレルギー反応を引き起こすことが懸念される。そのためウマ抗血清に代わる,より安全で高い中和活性を持つヒト型抗体の開発が求められている。本研究室ではこれまでに血清型B型BoNT(BoNT/B)を中和するヒト型モノクローナル抗体(M2,M4)の開発に成功し,M2はLCを,M4はHCを認識することを明らかにした。本研究では,in vitroにおいてM2,M4のBoNT/Bに対する中和作用機序を明らかにすることを目的とした。BoNT/Bの神経細胞への結合に対する作用を免疫蛍光染色にて解析した結果,M4はBoNT/Bの神経細胞への結合を阻害することが明らかとなった。SNAREタンパク質切断に対する作用をBoNT/Bの標的分子VAMP2のrecombinant タンパク質を用いて解析した結果,M2およびM4によるVMAP2の切断阻害は見られなかった。以上のことから,M4はHCに結合することにより,HCを介したBoNT/Bの神経細胞への結合を阻害することが明らかとなった。M2は小胞内から細胞質へのLCのtranslocationといったSNAREタンパク質切断以外の過程を阻害していることが示唆された。