第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

7 抗菌性物質と薬剤耐性

[ODP7A] a. 抗菌性物質

[ODP-193] 納豆菌を用いたカンピロバクター属菌の増殖抑制効果の検討

○門屋 亨介,池谷 美有,金田 里穂 (椙山女学園大・生活科学・管理栄養)

カンピロバクター食中毒は世界各国で発生している主要な食中毒であり,下痢や嘔吐などを引き起こす。国内でも発症件数は,年間約300件以上と非常に多く社会問題になっている。食卓の安全を確保するうえで本菌の汚染防止は緊急の課題である。主な原因菌はカンピロバクター属菌であり,市販鶏肉が高率に汚染していることから,調理段階での加熱処理しか有効な防御策はない。
本研究では,微生物を含んだ生菌剤に着目し,カンピロバクター食中毒の拡大を防止することを考えた。ヒト腸内フローラの病原微生物に対する抑制効果として納豆菌が利用されており,多くの病原微生物に対して強い増殖抑制活性をもつことが知られている。効果的だと思われる鶏腸内のカンピロバクターに対する納豆菌を用いた生菌剤の利用だが,納豆菌は多くの株が存在するため,どの株がカンピロバクター増殖抑制に効果があるか未知である。そこで本実験では納豆菌を10株準備し,カンピロバクター抑制効果の比較検討を行った。
まずはカンピロバクターを塗布した平板培地上での納豆菌生菌を用いたWell diffusion assayを行った。興味深いことに,全ての納豆菌株で抗菌活性があるわけではなく,また,その活性にも株により強弱があることが観察された。続いて,培養後の培地上清を濾過滅菌後,カンピロバクター塗布プレートに滴下したところ,株により抑制効果に差があり,NBRC16449株で非常に強い抑制効果があることが示された。これまでの結果は,納豆菌でも株によって増殖抑制効果が異なること,また,その機構も異なる可能性が高いことを示している。