[ODP-197] Red ginseng saponins suppress the release of hemolysin from Staphylococcus aureus
アトピー性皮膚炎(atopic dermatitis; AD)は,かゆみを伴うアレルギー性の疾患である.これまでに我々は,高麗人参を皮ごと蒸し,乾燥させた紅蔘をメタノールで抽出したエキス(red ginseng extract; RGE)のサポニン成分がADマウスに抗アレルギー作用を示すことを報告した.近年,ADの悪化因子として,皮膚や鼻腔に常在する黄色ブドウ球菌が知られるようになった.本菌は,掻き破り行為によりバリア機能の低下した皮膚に感染し,皮膚炎を悪化させる.そのため,本菌を標的とした治療はADに有効であると考えられるが,多剤耐性菌の出現のため抗菌薬による治療は困難である.そこで本研究では,ADの寛解治療を目指し,黄色ブドウ球菌に対するRGEの有効性を検討した.0.1 mg/mL RGEは,3時間でBAA-1717株の溶血毒素遺伝子(hly, hlgA, hlgC, およびhlgB)発現を抑制した.さらに,24時間培養液のα-ヘモリジン量およびウマ脱繊維血液に対する溶血作用は,RGEの濃度依存的に抑制された.そこで,溶血毒素遺伝子の発現制御をおこなう二成分制御システム(SaeSRおよびAgrCA)へのRGEの作用を検討したところ,RGEは,saeSおよびsaeR mRNA発現を3時間で有意に抑制した.以上の結果より,RGEは黄色ブドウ球菌の溶血毒素の遺伝子発現を抑制して,皮膚炎の悪化を防ぐ可能性が示唆された.