[ODP-198] 介護施設入居者における口腔内グラム陰性耐性菌の分離および性状解析
介護施設では薬剤耐性菌が問題視されており,口腔内からも耐性菌が分離されることが報告されている。介護施設では口腔ケアに洗口剤を用いられているが,口腔由来耐性菌への消毒剤の効果は明らかにされていない。本研究では,施設入居者の口腔から第3世代セファロスポリンおよびカルバペネム耐性菌を分離し,耐性遺伝子の検出,各種消毒剤に対する感受性検査を行った。広島県内の介護施設における入居者の口腔内から,第3世代セファロスポリンおよびカルバペネム耐性菌の選択分離培地にて分離した。分離した耐性菌は,TOF-MSによる菌種同定,PCRにて耐性遺伝子の検出を行った。分離した耐性菌に対して,塩化ベンザルコニウム,ポピドンヨードおよびCPCの最小発育阻止濃度(MIC)および99.8%最小殺菌濃度(MBC)を測定し,各菌株における感受性を検討した。施設入居者178名のうち41名から59株の口腔内耐性菌が分離された。そのうち11株(10名)の耐性菌がESBL遺伝子を保有しており,8株(6名)がCTX-M-1,2株(2名)がCTX-M-2,2株(2名)がCTX-M-9,1株(1名)がTEM遺伝子を保有していた。菌種としては,主にEnterobacteriaceae,Acinetobacter,Pseudomonas,Proteus属を認めた。各消毒剤の感受性は,一部の菌株で各消毒剤の口腔内適応濃度以上のMICおよびMBCを認めた。本研究において,施設入居者の24%の口腔からESBL産生菌が分離された。また,消毒剤に低感受性を示す菌が認められたことから,口腔ケアに用いる消毒剤によっては,耐性菌比率を増加させる可能性が示唆された。(研究共同者 広大院内感染症プロジェクト研究センター,国立感染症研究所薬剤耐性研究センター 梶原俊毅,沓野祥子)