第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

7 抗菌性物質と薬剤耐性

[ODP7A] a. 抗菌性物質

[ODP-199] P. gingivalisの膜小胞産生誘導及び迅速な殺菌効果を示すフェンネル抽出物

○吉野 七海1,3,池田 剛2,中尾 龍馬3 (1エスビー食品(株)・中研,2崇城大・薬学部,3感染研・細菌第一)

フェンネルシードは独特の甘みと清涼感をもつ香辛料であり,インドではマウスフレッシュとして使用されている。我々はこれまでにフェンネル抽出物が歯周病原細菌P. gingivalis (P.g) の菌体表層構造を変化させ,抗菌作用を示すことを明らかにしてきた。本研究では,フェンネル抽出物に含まれる抗菌物質の同定及び抗菌作用機序の解明を目的とした。
フェンネル抽出物を各種カラムクロマトグラフィーにて分画した後,各画分をP.gの増殖阻害試験法に供試し,抗菌活性が濃縮された画分を得た。この分画の活性評価を繰り返し,最終的にフェンネルの主たる抗菌化合物Xを単離,同定した。続いてフェンネル抽出物及び化合物Xの抗菌作用機序を明らかにするために,P.gに対する抗菌活性様式を評価したところ,フェンネル抽出物及び化合物Xは,極めて迅速(5分以内)にP.gに対して殺菌作用を示した。また,フェンネル抽出物により放出される膜小胞と,通常の培養により得られる膜小胞の形態や構成の違いを,走査型電子顕微鏡やSDS-PAGE等により評価した。その結果一部の膜由来タンパク質量に違いがあることが確認された。さらに,様々な口腔細菌に対するフェンネル抽出物及び化合物XのMICを調べたところ,Fusobacterium nucleatumを含むP.g以外の偏性嫌気性グラム陰性桿菌3種5株,および口腔レンサ球菌9種9株に対するMICは,いずれもP.gに対するMICよりも8倍以上の高い値を示した。
上記検討により,フェンネル抽出物及び化合物XはP.gの膜へ迅速に作用することで殺菌効果を示すことが明らかとなった。またこの作用はP.g特異的であることが示唆された。