第94回日本細菌学会総会

講演情報

オンデマンド口頭発表(ODP)

7 抗菌性物質と薬剤耐性

[ODP7A] a. 抗菌性物質

[ODP-202] 電気化学センサーを用いたポルフィリンによる細菌の光不活性化機構の解析

○加藤 久登,増田 和文,勝 孝 (就実大学薬学部)

【目的】体内で生合成されるプロトポルフィリン等が,光増感剤として働き細菌を光不活性化することが知られている。これらのポルフィリン類は,短時間の光照射で細菌を不活性化させるため,その作用点は細胞膜であると考えられる。本研究では,ポルフィリン類による細菌の光不活性化作用の機構を明確にすることを目的に,黄色ブドウ球菌の細胞膜損傷を,電気センサーを用いて解析を行い,抗菌作用との比較により作用点を検討した。さらに,光不活性化作用の構造活性相関をポルフィリン分子の分配係数との相関性から評価した。
【方法】ポルフィリンとしてプロトポルフィリン,メソポルフィリン,デューテロポルフィリン,ヘマトポルフィリン,コプロポルフィリン,ウロポルフィリンを用いて,黄色ブドウ球菌に対して10分間光照射を行った。抗菌作用はコロニー数を計測することにより評価した。細胞膜損傷作用は膜透過性亢進,呼吸阻害および膜電位消失の観点から,電気化学センサーを用いて測定した。
【結果】黄色ブドウ球菌に対して,プロトポルフィリン,メソポルフィリン及びデューテロポルフィリンは,1 μMで強い抗菌作用を示した。このとき,これらのポルフィリンは同濃度で呼吸阻害,膜透過性増大を強く引き起こし,膜電位を消失させた。一方でヘマトポルフィリン,コプロポルフィリン,ウロポルフィリンは,黄色ブドウ球菌に対するする作用は比較的弱く,ポルフィリンの作用の強さは,ポルフィリン分子の分配係数と相関性を示した。すなわち,ポルフィリンは分子の分配係数に従って細胞膜へ移行し,光照射により細菌の膜機能を傷害することで不活性化させることが明らかとなった。